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体験談ってお店のサクラみたいなもんです

 新聞広告や、雑誌の広告を見ていて目につくのが、「体験談」です。大体こんな感じでしょうか。

「最近、Aさんが突然綺麗になったんです。お肌の張りとツヤが全然違うし、心なしか目の輝きまで以前とは違います。気になって訪ねてみたところ、『最近○○を飲み始めたの』といって、勧められました。
 私は最初、半信半疑でした。というのも、以前同じような商品を試して、全く効果が無かったんです。今回の○○も、多分似たようなものだろう、個人差もあるし、Aさんにはたまたま合ったんだろうと、ダメで元々という気分でした。
 最初の一週間ほどは特に効果も見られず、ああ、やっぱりかと思っていたところ、二週間目から急に変わり始めてビックリ! お化粧のノリが全然違いますし、指で触ると、まるで指に吸い付くようにモチモチの感触に変わっています。生まれたての赤ちゃんの肌みたいです。
 気がつくとなんと、以前から気になって仕方が無かったシミまで薄くなってきているではありませんか!
 今ではスッピンで外出することもしばしば。友達からは会うたびに「最近綺麗になったね」「どんな化粧品使ってるの」と言われます。
 Aさんの目が輝いて見えた理由、今なら私にも分かります。自分に自信が持てるって、こういうことなんですね。○○、もう手放せません」(※1)

 こういう文章を見ると、自分も試してみたくなるのは人情。特にお肌に悩みを抱えている人にとっては切実です。
 でも、こういう体験談って、実はほとんど意味の無いものだ、といったら驚くでしょうか。
 「体験談なんて、いくらでも創作できる。きっと業者の人が自分で考えて書いているんだろう」という意味ではありませんよ(まあそういう事も有りそうですけど)。
 もしこの体験談が正真正銘の本物だったとしても、その商品の効能を裏付けるものではない、ということです。

 上では共感を得るために美容関係の例え話を出しましたが、今度は理解を得るために、医療の例え話を挙げてみましょう。

 ある病気Bがあったとします。とても治りにくい病気で、完治する人はわずか10%です。
 きちんとした病院で治療してもらうと、完治する確率は30%まで上がりますが、それでも治りづらい病気です(※2)。

 さて、ある業者が「Bが治るキノコ」の販売を始めました(本当はこんな売り方をしたら違法です(^-^; 実際の業者さんは、もっと巧妙にやっています)。
 1000人の人に販売したところ、100人の人から「このキノコのおかげで、病気が治りました」と、感謝の手紙が続々と。業者はその手紙を広告に載せて、ますます販売を伸ばしていきました・・・・

 もうお分かりと思いますが、この例え話では、キノコには全く効果はありません。全く効果が無いものでも、1000人中100人は自然治癒し、(キノコが効いたと勘違いして)お礼の手紙を送る。それを業者は利用するわけです。

 では、実はキノコには有害な作用があって、ただでさえ低い治癒率が、5%に下がってしまう、とします。この場合、体験談は手に入らないのでしょうか?

 手に入りますね。

 キノコに効果があっても、効果が無くても、あるいは有害ですらあっても、体験談は手に入るんです。
 体験談は、効果の有無と何の関係もありません。

「全国から、喜びの声が続々!!」
 はいはい、眉にツバ、眉にツバ。(※3)

<注釈>
※1
 何も見ずに適当に作った割にはいい感じですw
 万人共通の悩み,上手く行かなかった過去の苦い経験,半信半疑で試して見て,自分でも思わぬ効果が!という流れ。
 前半で感情移入させて,後半で「自分にも同じことが起こるかも」と期待させる。感情移入を誘う前半部の出来が,結構売り上げに効いてくるのかも知れません。中盤の「最初の一週間ほどは特に効果も見られず」が,もうちょっと続ければ,もうちょっと続ければ,と,むなしい期待をあおり続けますw

※2
 現代医療は万能ではありません。現代医療で治らない病気、病状はいくつもあります。でもそれは、「現代医療以外なら治せる」事を意味しません。ここで挙げた例で、もし現代医療をやめてキノコに走る人がいたら、それはとても残念なことですね。
 人は死ぬものです。死ぬべきところを医療でなんとか救っているのです。死んだら医療の失敗、ではありません。
 今の安全な世の中では認識しづらい、でもしっかり認識しておくべき事だと思います。

※3
 効果があるものでも、体験談を載せている場合はあるでしょう。美味しい食材とか、英会話学校とか、効果をうまく数字で表せないものや、そもそも効果の有無を問題にしないものなどの場合には、体験談で広告、というのも充分ありえると思います。ただしその場合も、体験談が効果の大きさを裏付けない、ということは変わりません。あくまで大体の雰囲気を伝えるためだけのもの、と捉えておいたほうが良さそうです。
 じゃあ、体験談でなく、数字か何かで説明されていればいいのか、というと、必ずしもそうではないところがまた悩ましい(^-^; 数字のトリックとか、ありますから。
 どれだけ普及しているか、大手メーカーが手を出しているか、というのは、一つの目安・・・だったはずなんですが、大手メーカーには「マイナスイオン」という前科がありますし、マスコミも平然とデトックスとか広めてるし・・・困っちゃいます。
 頼りになる判断基準がない中、悪徳商法やニセ科学に対する批判活動の存在は、本当にありがたいことです。

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