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テレビ番組での「実験」の意味

「本日のテーマは紅白まんじゅうダイエット! 朝食で紅いまんじゅうを、夕食で白いまんじゅうを食べるだけの簡単お手軽ダイエット方法で、いったいどれだけ効果があるのか?
 5人の被験者に試してもらったところ、2週間で平均1.5kgのダイエット効果!そのうち一人はなんと4kgものダイエットに成功しました!
 皆さんも試してみては?」

 こんなテレビ番組、よく見ますよね。あ、いや、私もさすがに紅白まんじゅうダイエットは見たことはありませんが、少人数の被験者の結果で結論する実験のやり方のことです。

 今回はこのテストが当てにならないものだ、という事をお話したいと思います。と言っても、私も実験や統計は全くの素人なので、私の分かる範囲での説明になります(ガクモン的にはもっと厳密なことが言えると思います)。

<問題点その1:偶然の可能性を排除できない>
 ええと、問題を単純化するために太ったか/痩せたかだけを考えてみます(どれだけ痩せたかは気にしないことにします)。あと、体重が変わらないケースも除外します(必ず太るか痩せる)。

 ダイエットにまったく効果がなかった場合、二週間後に体重が減っている確率は1/2。
 被験者を5人とした場合に、偶然全員が痩せている確率は、2の5乗分の1ですから、約3%になります。
 「なんだ、結構低いじゃん。じゃあ偶然とは言えないんじゃね?」と思われるかもしれません。でもテレビを見ていたりすると、一人だけは太っちゃった。なんてのもありませんか?
 1人だけ太って、残りの4人が痩せる確率は約16% 。先の3%と合わせ、太った人が1人又は0人になる確率は19%です。5回実験すれば、1回くらいは効果がある「ように見える」結果になるわけです。

 とは言え、これならまあまあ、信用できる結果が出そうな気がします。でも、そうは行かないんですねえ。

<問題点その2:実験条件が統制できていない>
 昔「カレーダイエット」って言うのがありました。
 自分が毎日カレーを食べている姿を想像してみました。オゥエエェ。

 私、モノグサでして、カレーを作りだめしたりします。連続で耐えられるのはせいぜい3日。残りは冷凍庫行きです。ええ、3日で食べきれないほど作っちゃうんですw
 毎日毎日同じメニューが続いたら、どんなに好きなものでも飽きちゃいます。食べる量だって、減りますよね。っつか、ストレスで痩せそう。

 あと、こういう実験のときって、大抵逐一カメラに撮られていますよね。カメラに映っているときに、おしりをボリボリかきながら、寝そべってセンベイかじってテレビ見る、なんてことは普通出来ません。カメラがなかったとしても「自分はダイエット中だ」と思ったら、知らず知らずの内に食事の量や間食は控えちゃうと思うんです。やるからにはいい結果が欲しいですからね(5人のうち自分だけ太っちゃった、なんて、目も当てられません)。

 本当にカレーに効果があることを示すんなら、事前に生活習慣を逐一チェックして、総摂取カロリーや運動量など、体重を変化させる要因を把握して、それらが変わらないようにコントロールしつつ、メニューにカレーを組み込まなければなりません。他の食事メニューもコントロールするべきですね。

<問題点その3:プラセボ効果が考慮されていない>
 これは問題点その2の一部ではあるんですが、あえて分けて書きます。
 全ての要因を厳密に統制していても、カレーに効果があるという触れ込みで実験を実施しカレーを食べると、それだけで効果が得られてしまう可能性があります。別のエントリでも紹介した、プラセボ効果です。(※1)

 プラセボ効果を取り除くなら二重盲検法(ダブルブラインドテスト)。
1.カレーの中の、ダイエットに効く成分(有効成分)を特定(仮定)する。
2.有効成分を含んだカレーと、含まないカレーの2種類を準備する。両者は見分けがつかないようにしておく。
3.どちらのカレーが有効なのか知らない人を用意して、その人がランダムに被験者にカレーを提供する(一旦決めたら、同じ人には同じカレーを与え続ける)。
4.被験者は自分が与えられたカレーに有効成分が含まれているかどうかを知らない状態を保つ。

 ざっくり書きましたが、こうして実験を行えばプラセボ効果を差し引いた本当の効果が分かるわけですね。

 本人が、自分が食べたのが有効成分を含むか含まないか分かってしまっては正しい結果にならない。それだけでなく、その提供者が知っていると無意識の内に身振りに現れて影響してしまうことがあるから、提供者もそれを知らない状態にする。これが二重盲検法の考え方です。

 逆に言えば、これだけ慎重にやらないと、正しい結果が得られる保証がなくなってしまうわけです。医薬品の臨床試験では,二重盲検法は当たり前に行われています。

<問題点その4:作為が排除できない>
 人を5人集めました。
 日にちをかけ、コストをかけて実験をしました。
 全員太っちゃいました。

 さて、あなたがプロデューサなら、どうしますか?
 捏造って,やっちゃいけないことだし、やっていないと思いたいんですが、マスコミの過去の実績からして、信用するのは普通に無理。

 私はテレビ局の内情に詳しいわけではありませんが、2週間かけた実験が失敗したとして、更に2週間かけてやり直す時間もお金もないでしょう。かといって、失敗した結果をそのまま流すわけには行きません。「効果のないダイエット」番組なんて、誰も見ませんよね。
 そうすると、選択肢はおのずと限られます。中止にするか、「作る」か、ですね。自浄作用に乏しいマスコミで,捏造の誘惑に耐えるのはとても難しい事だと思います。私たちはその分差し引いて見なければなりません。

<結論>
 以上挙げてきたように,テレビ番組の中の「実験」は、結果をゆがめてしまう様々なバイアスが存在していて,多くの場合それらを除去する為の適切な処置がとられていません。
 均質なサンプルで行える物理実験や化学実験ならまだしも,ヒトをサンプルにした実験は,ほとんど意味がないと言っていいと思います。しっかりした知見に基づいた実験でさえ,デモンストレーション以上の意味はありません。いわんやいかがわしいダイエット番組においてをや。(※2)

 自分が普段から気にしていたり,悩んでいたりすると,どうしても無条件に受け入れてしまいがち。でも,「あるある」の捏造事件を例に出すまでもなく,その信憑性はそれほど高く無いと思っておいた方が良いでしょう。
 効果がないだけならまだしも,いつぞやの白インゲン中毒事件のように,健康被害に繋がらないとも限りません。

1.「実験」は無視する
2. 必ず裏を取る

 私がテレビを見るとき,心がけていることです(※3)。

 

<注釈>
※1
 実際のところ,「痩せる」ということに対してプラセボがどの程度強く影響するのかは良く分かりません。可能性としては考えられる,という事です。何か知見があるのかなあ。
 調べてみた範囲では,信頼性の高い情報が見つけられませんでした。

※2
 もちろん,しっかりとした知見に基づくデモンストレーションは、視聴者の理解を促す上では意味があります。

※3
 おかしな番組に対しては,大抵インターネット上でツッコミが入っているのでありがたいです。時々そのツッコミに対して裏を取らなきゃいけない場合もありますけどw

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