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ニセ科学ツアー_ホメオパシー

 久しぶりのニセ科学ツアーです(構成変えてみました)。またまた長いですよ〜。
 本日のお題は「ホメオパシー」です。

 ホメオパシーがニセ科学だとされていること、批判されている存在だっていうこと、知らない人が多そうです。
 名前は知っているけれど、それがどんな原理のものなのかは知らない、と言う人も。

 でも、テレビで紹介されたりとか、いろいろな本が発売されたりとか、かなりポピュラーな存在になってきているみたい(※1)。
 ホメオパシーと言う名前を最近聞いて、内容は良く知らないけれどちょっと興味を引かれている人には、実際に手を出す前に,ぜひいろいろな情報に触れていただきたいです。

0.基礎編_ホメオパシーってなに?

0-1.ホメオパシーの歴史と原理
 日本ホメオパシー医学会のホメオパシーの基本原則から引用します。

ホメオパシーは、約200年前に、ドイツ人の医師、サミュエル・ハーネマン(Christian Samuel Hahnemann 1755〜1843)が体系化した医療であり、本来、体に備わっているといわれる自然治癒力に働きかけ、病気の人が全体のバランスを取り戻し、回復していく過程に作用していると考えられている。
(中略)
 また、ハーネマンは、試行錯誤しながらホメオパシー薬をつくる過程において、毒性の強い原料を段階的に希釈していき、治療効果の期待できる最小限の薬量を見つけようとした。その際、希釈すればするほど、また、希釈物を激しく振とうすればするほど、ホメオパシー薬の“ポテンシー(potency:効力”)が高まり治療効果が高まることに気がついた。ここに、希釈(dilution)と振とう(sucussion)による活性化(potentisation)という考え方が生まれた。

 続いて日本ホメオパシー振興会のQ&Aから引用。

ホメオパシーは「類似療法」や「同種療法」と訳されることもあります。ホメオとは「類似の」、パシーとは「苦しみ」や「病気」という意味ですから、ホメオパシーとは、類似のものによって病気を治療するという「類似の法則」に基づく医学体系です。

 ということで、「ある症状を引き起こす物質、もしくはそれを象徴する、連想させる物質を極度に希釈,振とうして服用すると、その症状(を発生させる病気)を治癒することが出来る」というのがホメオパシーの根本の考え方です。

 ヘビの毒を希釈すると、頭痛を緩和する薬になる。
 トリカブトを希釈すると、風邪薬になる。などなど。

 これは単純化した例で,実際には複数の物質を組み合わせたり,細かな症状の違いに合わせて処方を変えるようです。

 希釈によって作られた「クスリ」を「レメディ」と呼びます。砂糖玉に染み込ませて乾燥させたりします。液体だと扱いにくいから、かな?(「砂糖玉」は別にキーポイントではないみたいです)

0−2.どのくらい薄めるのか
 ポピュラーなレメディはC30と言って,元の物質を水又はアルコールで100倍に薄める作業を30回繰り返したものだそうです。つまり100の30乗分の1(※2)。この時点で「ん?」と思った方もいるのでは。
 このC30がいったいどのくらいの濃度なのか、次項でちょこっと計算してみましょう。

1.初級編_ホメオパシーに対する科学的評価
1−1.単純な事実

 以下、ごく大雑把に、レメディの中に「有効成分」がどれだけ含まれるかの計算です。
 有効成分1モルを希釈していくことを考えてみます(「モル」が分からなくても大過ありませんので、そのまま読み飛ばしてください)。

 ある物質1モルには分子が6.02×10^23(10の23乗)個含まれます。これは約6個の分子を10倍して10倍して10倍して・・・(以下20回繰り返し)という膨大な数です。1兆が10^12(10の12乗)ですから、10^23は1兆の1000億倍になります。
 例えば水1モルは約18グラム。18グラムと言うと、コップの底に僅かにたまるくらいでしょうか。ほんのちょっとの中にも、膨大な数の分子が含まれているんですねえ。

 さて、上でも出てきたレメディのC30。物質を100倍に薄める、と言う作業を30回繰り返すことですね。
 100と言うのは10^2(10の2乗)です。これを30回繰り返すと希釈倍率は、10^2×10^2×・・・・=10^(2×30)=10^60(10の60乗)倍となります。元の成分の量が1/10^60(10の60乗分の1)になる、ということ。
 分子の個数で言うと、10^23(個)÷10^60=10^-37(10のマイナス37乗)個・・・あれれ、1個よりもはるかに小さい数字になってしまいました。つまり、こういうことです。

「レメディの中に、元の分子が1個でも含まれている可能性はすこぶる低い」(※3)

 それゆえ,ホメオパシーでは物質が残るか残らないかではなく「振とう」が大事だとされています。「叩き付けるように激しく振る」と,しばしば出てきます。

1−2.科学的な妥当性
 いつもお世話になっている幻影随想ホメオパシー・オン・トライアル—ホメオパシーは詐欺か治療か—から引用します。

"Trick or Treatment"を書いたエッツァルト・エルンスト(Edzard Ernst)医師は代替医療の研究者で、様々な代替療法に対して二重盲検試験を行っている。彼の研究や、これまで他の研究者によって行われた科学的な検証から得られた評価は、「ホメオパシーにプラセボ以上の効果はない」というものであり、今年の一月にはイギリスでの保険適用も打ち切られている。
Medical News Japan|イギリス:ホメオパシーによる代替療法を保険適応は不可能にhttp://www.medicalnews.jp/index.php?itemid=696

 一言で言えば,「効果が科学的に認められていない」というモノです。
 「認められていない」には二通りの意味が考えられます。

(1)効果の確認が(まだ)行われていない
(2)効果の確認を行ったが、「ある」という結果が得られなかった。

 ホメオパシーの場合は(2)である、ということが、引用先の記述から分かりますね。

1−3.じゃあ、なぜみんな効くって言うの?
 「ホメオパシーで病気が治りました」的な体験談をしばしば見かけます。
 科学的な効果は認められていない(と言うか、効果が無い事が認められている)のに、なぜ「治った」という報告が後を絶たないのか。それにはいくつか理由が考えられます。

(1)プラセボ効果
 ざっくり言うと「効くと思って飲めば効く」ということ。病は気から。
 全く効果のない、それこそ砂糖玉でも病気の症状が改善してしまうことがあるため、医薬品の臨床試験などではプラセボ効果を取り除くことに細心の注意を払っています。

(2)認知バイアス
 情報の取捨選択に偏りや歪みが混入する、「人は見たいものを見る」ということ。
 プラセボ効果は少なくとも実際に効果がある訳ですが,認知バイアスは観察する人間の心の動きであって,患者が実際に良くなるかどうかとは関係ありません。
 悪意をもって歪曲するわけではなくて,無意識で働いてしまうのが厄介なところ。本人も気づかないんです(本人が気付いていたらただの欺瞞ですけど)。

(3)自然治癒
 人間の体には自然治癒力が備わっています。風邪をひいても、薬を飲まずに寝て治す、なんて人もいますね。何もしなくても治ってしまう病気も怪我もイッパイあります。
 その自然治癒を、ホメオパシーの効果と勘違いするケースも多いようです。

 風邪が3日で治った→レメディを飲んでなかったら1週間はかかっただろう

(4)効かなくても「効く」と思わせる仕掛け
 ホメオパシーには、効果がなかったときのための理屈がいくつか用意されています。例えば・・・

「同じ病気でも、レメディの最適な配合は一人ひとり異なる」
「他の治療(現代医療)と併用すると、効果がなくなる」
「レメディが効くとアグラベーション(悪化)が起こることが有る」(「好転反応(瞑眩(めんげん)反応)」などと同様の概念で,良くなる前に、一度症状が悪化すること)

などなど。

 以上、挙げてきたようなことが組み合わさると、レメディを飲んだ後で起こる全ての変化が(症状の悪化ですら)、ホメオパシーによる治療効果として捉えられるようになります。
「ああ、やっとうまくヒットした」とか、
「病院に行くのをやめてホメオパシー一本に絞ったら見る見る良くなった」とか、
「好転反応がひどかったよ。よっぽど体に毒がたまってたんだなあ」
などという言葉になるわけですね。

 これらはホメオパシーの側にしてみれば「効かなかった時の理由付け」以上の意味はないんですが、社会的にはより深刻な問題の引き金となりえます。というか、なっています。

2.中級編_ホメオパシーに対する批判的言説
2−1.ホメオパシーと医療ネグレクト(無視、ないがしろにすること)

 ホメオパシーについて、あちこちで批判がなされています。批判の主な対象、そして私も最も問題だと感じるのは、ホメオパシーの主張を信じていらっしゃる一部の方が引き起こす医療ネグレクトです。

<リンク1>
 まず、怪我をしたお子さんをホメオパシーで「治した」例。
 NATROMの日記より,「ホメオパシーと医療ネグレクト」

<リンク2>
 マラリア予防にホメオパシーを用いることへの注意喚起。
Don't rely on homeopathy to beat malaria, doctors warn 
 意訳すると「舐めるな!危険」

Malaria advice 'risks lives'  
 意訳すると「そんなんだと,あんた死ぬわよ!」

<リンク3>
 実際にマラリアにかかってしまった例。
Homoeopathy may not be effective in preventing malaria 

<リンク4>
 おなじみkikulogのエントリ「ホメオパシー」
 もう一つ,別のエントリ「報道ステーションでホメオパシー」

 ここは是非コメント欄もご覧下さい。コメント欄に張られている様々なリンクも参考になります。

<リンク5>
 幻影随想のエントリ「ホメオパシー・オン・トライアル—ホメオパシーは詐欺か治療か—」(初級編のリンクと同一のものです)

 

 レメディ自体はただの砂糖玉で、効果もなければ害もないものと言えるんだけど、実際には(主に信奉者達の行動によって)問題が発生しているんだなあ。と,思ってもらえました? まだダメ?
 じゃあ,もうひとつ。

2−2.伝染性疾病とホメオパシーの危険な関係
 インフルエンザのワクチンは、低い確率ではありますが副作用が出ることがあります。また、ワクチンに含まれる水銀が騒がれたことがありました。
 世間では予防接種を拒む動きがしばしば見られます(※4)。

インフルエンザのセルフケア

 本も出ています。
「インフルエンザ・ワクチンは打たないで!』

 ここで考えて頂きたいのは、伝染性疾病が蔓延するメカニズムです。

 ちょっと架空のシミュレーションをしてみましょう(以下の数字は、適当なものですので実態とは異なります)

 ある伝染性疾病について、以下のような特徴を持っていると仮定します。

(1)一人の感染者は感染力を失う前に10人の人間に接触する。
(2)接触した相手が予防接種していない場合、50%の確率で感染する。
(3)予防接種している場合、20%の確率で感染する。

 以上の条件で、「誰ひとり予防接種していない社会」と「全員が予防接種している社会」とで,感染の拡大を比べてみます。初期感染者は両方とも一人とします。すると,感染者数は以下のように拡大していきます。

     予防接種なし 予防接種あり
0次感染    1      1
1次感染    5      2
2次感染    25      4
3次感染   125       8
4次感染   625     16

合計      781     31

 感染者の増加=感染源の増加なので、感染は指数関数的に拡大します(ただし,未感染者の割合が減れば増加率は減少していく)。だから感染率の違いが非常に大きな差になります。
 予防接種は個人が感染を免れる上で有効なだけではなく、社会全体のリスクを下げる面からも有効で重要なんです。
 予防接種を拒否することの意味、個人の好みやリスクだけでなく、社会的な意味も併せて考えてみていただきたいな、と思います。

 「ホメオパシーで感染が防げるから大丈夫」と言うのであれば示していただきたいのが、ホメオパシーの効果に関する科学的な検証結果です。個人の自由で済む話ではなく社会的な問題であることを考えれば、きちんとした根拠を示すことはもはや責務と言えるのではないでしょうか。

3.上級編_ホメオパシーの関連情報
3−1.ホメオパシーに肯定的なサイトの数々

<リンク1>
 様々なホメオパシー関連団体のホームページがあります。
 日本ホメオパシー医学協会
 日本ホメオパシー医学会
 日本ホメオパシー振興会

 様々な団体が存在しているようです。お互いに反目とかないのかしらん。

<リンク2>
 大和薬品株式会社のホームページの中の記事「米国で再び脚光浴びるホメオパシー(2005年2月の記事)

 化学薬品の会社でもなく、製薬会社でもなく、健康食品を製造販売している会社のようです。扱っている商品はホメオパシーとは何の関係もないようですが、扱っている情報は玉石混交,その中にホメオパシーの関連情報もトピックス的に混ざっています。

<リンク3>
「腰痛治療ナビ」ホームページ内の「ホメオパシー」

 なぜか腰痛にも効くホメオパシー。

<リンク4>
 堀耳鼻咽喉科医院のホームページ内の「ホメオパシー療法」

 耳鼻咽喉科でもホメオパシー。

 いろいろ見ているうちに,以前のツアーでもたびたび感じた「万能」感が,お部屋一杯に広がります。

3−2.ちょっと詳しく見てみる
 日本ホメオパシー振興会のQ&Aのページについて,特に疑問に思った部分をピックアップしてみます。Q&A&Q,ですw。(以下の文章では「プラシーボ」と「プラセボ」が混在していますが、同じ意味です)

Q3.ホメオパシーの特徴は何ですか?
 ホメオパシーは、副作用がなく、速やかで、優しく、永続的な医療です。(以下略)

 「永続的」ってなに? 一度なおったら,二度とかからないってこと? 服用を継続すればかからない,っていうのは,「永続的」とは言わないですよねえ。
 インフルエンザになって、ホメオパシーで治癒したら、もう一生インフルエンザにはかからない、っていうことがあるんでしょうか?

Q4.ホメオパシーは安全で、副作用はないのでしょうか?
 「副作用」という言葉に、どのような意味を持たせるかによりますが、一般的な意味での「副作用」は全くありません。なぜならば、通常の分子レベルを遥かに超えるほど 、天文学的に希釈されているからです。(以下略)

 「分子レベルを遥かに超える」という文章が意味不明ですが,1分子も残らないっていう意味かな。「薄めれば薄めるほど効果が強くなる」と主張している人が,同じ口で「薄めているんだから副作用は無い」って言えるのが不思議です。なんで副作用は薄めても強くならないんでしょうか。

Q5.海外ではホメオパシーは知られているのですか?
 (前略)ドイツ・フランスでは医師の四割がホメオパシーを使い、何と全薬剤の約三割をホメオパシー薬が占めていて、どの薬局でもホメオパシー薬剤を販売しています。東欧、インド、南米等でも、ホメオパシーは非常によく知られています。

 それは大変。

Q7.そんなに素晴らしい医療ならば、なぜ日本ではあまり知られていないのですか?
 (前略)ところが最近で は、雑誌にホメオパシーに関する記事が掲載されたり、さまざまな入門書が出版されるなど、日本でも次第に広まり始めています。

 それは大変×2。

Q8.普通の薬剤とホメオパシーのレメディーはどこが違うのですか?
 普通の薬剤は、人工的な「化学物質」をかなりの高濃度で投与します。そして病気のときに起こっている生化学的異常に対して、「過剰」に対しては遮断、「不足」に対しては投入、といったように、生物体に対して物質的に干渉する、生化学的介入です。それは「速やかで、優しく、永続的な医療」という医療の理想とは程遠いものです。

 普通の薬剤の定義として「『過剰』に対しては遮断,『不足』に対しては投入」という表現が普遍的に正しいかどうかがまず疑問ですが,それを措くとしてもなお「生物体に対して物質的に干渉する,生化学的介入」がなぜ「医療の理想とはほど遠い」のか,良く分かりません。

Q10.ホメオパシーは自然治癒力を高める漢方やハーブなどの他の治療法とは違うのですか?
 (前略)第二に、ホメオパシーのレメディーの効果は実際に健康な人に試してみたデータとして蓄積されている、ということです。そこには、単なる推測や憶測などは入りません。その方法は、ホメオパシー独自のものであり、科学的で厳格なものです。(後略)

 漢方やハーブが科学的でないかのような言い方がされていますが,漢方やハーブを愛好なさっておられる方からの反論は無いのでしょうか。
 それはともかく,ホントに「科学的で厳格」なら、それが明らかにされていれば,ホメオパシーに批判が寄せられることも無いだろうと思います。

Q11.ホメオパシーの効果は偽薬効果(プラシーボ効果)とは異なるのですか?
 ホメオパシーのレメディーは化学物質的には「ただの水」ですから、そのようなもので生理的な効果があるはずがないという憶測のもとに、ホメオパシーは「信じると治ることもある」というプラシーボ効果にすぎないという主張を時々耳にしますが、それは大きな誤りです。ホメオパシーの効果が最も顕著なのは、プラシーボ効果を期待できないと思われる赤ちゃんや動物です。またメカニズムの分からないものを全てプラシーボ効果と名前を付けるだけで、それ以上考えない傾向があるようですが、それは全く科学的ではありません。信じるだけで治るという現実があるならば、信じるだけでなぜ治るのか、という心身の相関関係のメカニズムを解明しようとするのが真の 科学的態度です。

 「ただの水だからプラセボ効果だ」などと言う主張(がされていると言う主張)は初めて見ました。どこでそんなことが言われているのか,教えて欲しいですね。
 「ただの水だから効果がない。でも効果があるように見えるケースがある。その理由の一部がプラセボ効果で説明できる」という説明なら聞いたことがあります。

 プラセボ効果は定義がはっきりしており,その存在が確認されている、確認できるものです。
 メカニズムが分からなくても,プラセボ効果を排除して実質の効果の有無を確認することは可能です。だから、「メカニズムが分からないものを全てプラシーボ効果と名づける」という事をするのは、多分科学のことを全く知らない人だろうと思います。で、誰がそんなことをしているんでしょうか。

(Q11の続き)また、逆説的ですが、一般的な薬の効果も、かなりの部分がプラシーボ効果ではないかという意見もあります。

 どの辺が逆説的なのかちょっと良く分かりませんが,二重盲検法の手法が確立する前には、プラセボ効果を実質的な効果であると誤認したことがあったことは確かでしょう。
 だからクスリの効果を確認する時には、すべからくプラセボ効果を取り除く為に必要な手順を踏むべきだし、現在ではそのように実施されているわけです。

 ホメオパシーの効果を確かめる時にも,当然同じだけの手順を踏むことが必要ですね。
 じゃ無いと「かなりの部分がプラシーボ効果ではないか」などと疑われてしまうわけです。

 もしかして臨床試験の話ではなくて、「一般のクスリを患者が服用する際にもプラセボ効果が現れている」という主張なのかな? だとしたら、そんなことは当たり前ですね(^-^;
 普通のクスリを服用したときには当然プラセボ効果が現れうるし、それに加えて実質的効果が得られるわけです。(※5)

Q12.素晴らしい治療にも思える一方、あやしい医療ではないかと心配なのですが?
 (前略)特にホメオパシーの場合には、次にご説明するアボガドロ限界を超える希釈、という問題があるために、簡単に「ありえない!インチキだ!」と断じるのみで、それ以上検証しようともしない、非科学的な研究者や医師もたくさんいます。(後略)

 「アボガドロ限界を超える希釈」が問題なのではありませんね。ただ単に効果があることが確認できていないことが問題なので。
 誰が検証するべきなのかと言ったら、それを主張している人、更にそれで利益を得ている人、ですね。

 「検証しようともしない」ことが非科学的であることの証左であるなら、200年にわたって検証ができていないホメオパシーに関連する人たちはおしなべて非科学的である、という事なんでしょうか。それとも200年にわたって最大限努力を続けてきたにも拘らず、検証できていないというコトなのかな。
 だとしたら「200年努力しても検証できない」事実を以って「ありえない」と結論したとしても、あんまり非科学的な感じはしませんね。

(Q12の続き)もしインチキならば、フランスではなぜ長年にわたって、ホメオパシーのレメディーが全薬剤の3割を占め続けることができるのでしょうか?

 なぜなんですか? その理由まできちんと説明して欲しいです。「フランス人限定で効果がある」と言うコトですか?
 「全薬剤の3割」というのが、効果があることの証明であるのなら、フランスですら残りの7割はその他の医薬品が占めているのだから、レメディの効果は普通の医薬品の半分以下である、との主張であると理解して良いですか?
 たとえ普通の薬剤の半分以下しか効かなくても、きちんと証明できればそれはそれで凄いことですけどね。

Q14.ホメオパシーのレメディーには何が入っているのですか?
 (前略)そこには水に写し取られた「高度の情報」のみが入っているのです。良い知らせ(情報)が人を健康にしたり、悪い知らせが人を病気にするように、レメディーに宿っているところの「高度な情報」が、私たちの「健康への秘密のキー」を開けてくれるといっても良いでしょう。

 モロにプラセボ効果のこと(だけ)を言っているように見えますが,とりあえず「高度の情報」ってなんですか?
 どうやって情報が写し取られていることを確かめたのか、どうやってそれが「高度」であることを確かめたのか,ぜひ知りたいですね。

Q16.ホメオパシーの臨床では、どのようなことが行われますか?
 専門的ホメオパシーの臨床は、1〜2時間にわたるインタビュー(問診)が臨床の骨子です。

 医療の種類に関らず,丁寧な問診がなされることは良いことですね。問診が重要なことは疑いありませんが,「骨子」にしてしまっていいのかどうかはちと疑問です。「骨子」だから,一応は他の診察も行うんですかねえ。

Q18.ホメオパシーのセルフケアで難しいことはありますか?
 本来のホメオパシーは、その人に最も合った単一のレメディーを選ぶのが理想です。そのレメディーがぴったりと合った場合には、その効果は本当に目覚しいものがあります。しかし、単一のレメディーを正しく選ぶのは、専門家でも簡単ではありません。セルフケアの場合は、もっと簡便な方法が適しています。

 ええと,効いたり効かなかったりするということですか? 専門家でも難しいって・・・どの程度の割合で適切に処方できるんでしょうか。

Q23.子供の急な発熱など即効性が重要な場合があると思いますが、いかがでしょうか?
 全体的で根本的な治療というと、長い時間かかって体質を少しずつ変えていくことは理解できるけれども、新薬に比べて即効性がないのではないかと思われる方もいらっしゃいますが、実際は全く違います。急性疾患の様に即効的効果が必要な場合は、驚くほど速やかに効きます。通常の新薬の場合には、胃壁の粘膜から徐々に吸収され、血管を通じて送り込まれるわけですから、効き始めるまでどんなに早くても15分から20分程度かかるのが普通です。
 これに対してホメオパシーのレメディーは、ある種の「情報」ですから、その信号はほとんど瞬時に全身に駆け巡ります。そしてその瞬間から心身のあらゆるレベルで変化が起こり始め、急性疾患の場合には5分以内に効き始める事が殆どです。口に入れた瞬間から効き始めることさえよくあります。急性症状の場合、10分以内に全く何も起こらない場合には、レメディーの選択が間違っていると、ほぼ判断して良いでしょう。

 専門家でも簡単に処方できないレメディを,急性疾患,特に重篤なものなどに適用しても良いのでしょうか。
 15〜20分が0分になることには,なにか実質的な意味があるんですか? 診療には1〜2時間かかるんじゃありませんでしたっけ。
 蛇足ですが「新薬」「急性疾患」「急性症状」等の用語の使い方にやや違和感を覚えます。それぞれ、どんな意味で用いているのでしょうか。

 って、途中からほとんどツッコミになってしまいました(^-^;

<終わりに>
 レメディ自体は人体に害を及ぼすものとは思えませんから、プラセボ効果を考えれば「もともと医者にかからなくても治る程度のごく軽い病気」について、苦痛や不安を軽減する目的で処方することまでどうこう言うべきではないかもしれません。「イタイのイタイの、とんでけー」と同等のレベル、ということです(※6)。

 一方、一部のホメオパス、又はホメオパシーにはまっている人が、自分が正統な医療行為をネグレクトするのはまだしも、他人(自分の子供も含む)に対して強制又は誘導する行為について、私は強く非難します。
 また,(重要ですから何度でも繰り返しますが)伝染性疾病に関しては、問題は個人を越えて社会的な意味を含んでいることを考慮して欲しいです。

 

<注釈>
※1
 検索すると,量の多さもさることながら,肯定的な意見の多さに愕然としますね。

※2
 場所によっては違う数字が書かれているのでちょっと迷ったのですが,多分これで正しいだろうと思います。間違ったから,正しいからって別になにも変わりませんけどw

※3
 ここではモルで統一して計算しましたが,もし重量倍率で希釈するなら、分子が一つでも残る確率は更に小さくなると思われます(水の分子量は約18。大抵の物質はこれより「重い」ので、同じ重量の中に含まれる原子・分子の数は相対的に少なくなります)。ただまあ、今回の話の中では意味の無い差異ですね。
 でもホメオパスにとっては意味のある差でしょうから、どの単位を使うのか、聞いたらきちんと答えが返ってくるんでしょうけど。

 「ごく微量が影響を及ぼす」というと、環境ホルモン(内分泌攪乱物質)に似ているような印象を受けますが、環境ホルモンはあくまでも確実に存在している物質の影響。全く残存しない物質が影響を与えるとするレメディの理屈は、環境ホルモンとは似て非なるものです(そして環境ホルモンの理屈も、今のところ科学的に支持されているとは言えない状態です。念のため)。

※4
 インフルエンザの予防接種を拒む理由として「ワクチンは効かないから」という主張によるものもあるようです。インフルエンザワクチンの効果,問題点その他については,こちらが分かり易くまとまっていると思いますのでご参照ください。
感染研のホームページより「インフルエンザワクチンについて」

※5
 インフォームドコンセントを含む患者に対する情報提供が、プラセボ効果に対してどのような影響を与えているのかは、ちょっと気になります。直感的にはプラセボ効果を減じる方向に影響するのではないか、と思えるのですが、どうなんでしょうね。

※6
 病気が重いか軽いかを素人が厳密に判断できるとは、私は思っていません。医療リソースが有限であることを考えればナンでもカンでも医者に見せろとは言えませんが、少なくともホメオパスやレメディーが、医者や医薬品の代わりにはなり得ないということの認識は必要かなあ、と思います。そうすれば、急変にきちんと対応できるかも。

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コメント

はじめまして、ハブハンさん。

お書きになる丁寧で誠実な文章に惹かれて拝見させて頂いています。難しい専門用語の苦手な私でも、するすると水を飲むように読む事が出来るのでたくさんの人に読んで頂けるようにせっせとアクセスしています(ググって上に来るように・・・笑)。

本音を言えば、何故ホメオパシーを受け入れる人がたくさんいるのか不思議です。アロマセラピー、ハーブの延長線で、ちょっとお洒落だし明るい雰囲気で副作用はないんだから安心、というイメージ戦略が成功しているってことかな?と思ったりしています。
しかし少し踏み込んで情報を調べれば、ホメオパシーの本質を知るのは簡単な事です。ホメオパシーの真髄であるレメディがどのように作られているのかを知って、その効果を受け入れる、のギャップをどう埋めているのだろう?知識が氾濫している割には、きちんと調べる事が苦手になっている・・・風潮と言う表現は嫌いですが、風通しが案外悪くなっているのかもしれませんね。

>レメディ自体は人体に害を及ぼすものとは思えませんから、プラセボ効果を考えれば「もともと医者にかからなくても治る程度のごく軽い病気」について、苦痛や不安を軽減する目的で処方することまでどうこう言うべきではないかもしれません。

私もそう思っています。コンビニで売るのど飴レベルでやる分には、ほとんど異論はありません。医療現場に口を挟む事が問題だと考えています。

別の記事での某アルファブロガー(?)の方とのやり取り、陰ながら応援しています。上から目線を逆手にとって、すぱっと足下掬ってやっちゃって下さい(笑)。

投稿: うさぎ林檎 | 2009年4月12日 (日) 10時49分

 うさぎ林檎さんこんにちは。コメントありがとうございます。

>難しい専門用語の苦手な私でも、するすると水を飲むように読む事が出来るのでたくさんの人に読んで頂けるようにせっせとアクセスしています(ググって上に来るように・・・笑)。
 
 ありがとうございますw
 読み易いと言っていただけるのはとても嬉しいです。人目にさらす文章を書くのはこのブログが初めてなので,そこがとても不安でした(よそ様のコメント欄や掲示板にも,書き込んだことはありませんでした)。
 引っ込み思案な私にきっかけを与えてくださったのはアチラ側の人なわけで,ちょっと複雑な気持ちですw

>本音を言えば、何故ホメオパシーを受け入れる人がたくさんいるのか不思議です。アロマセラピー、ハーブの延長線で、ちょっとお洒落だし明るい雰囲気で副作用はないんだから安心、というイメージ戦略が成功しているってことかな?と思ったりしています。

 仰る通りで,ニセ科学がしばしば備えている階層構造は気になります。大体こんな感じでしょうか。
アロマテラピー → ホメオパシー( → 波動)

 私が知っている中で,この構造を意図的に作っているのではないかと思えるのが「水からの伝言」関係です。
 音楽で植物が元気になる,お酒がまろやかになる → 「水からの伝言」 → 波動

 入門編から上級編までのステップアップ。
 総論賛成レベルの道徳と絡めているところと言い,小学生をターゲットにしているところと言い,目的を達成する為のマーケティングと捉えるとかなり巧妙ですよね。
 「ナンセンスだけど目くじら立てるほどではないもの」は,階段の一段目だと思うと笑ってもいられないのですが,じゃあどうすれば良いのか,悩ましいですね。

>別の記事での某アルファブロガー(?)の方とのやり取り、陰ながら応援しています。上から目線を逆手にとって、すぱっと足下掬ってやっちゃって下さい(笑)。

 アハハ・・・結局は平行線でしょうけれど,なるべく近い平行線wになるようにがんばります。

投稿: ハブハン | 2009年4月12日 (日) 18時06分

ハブハンさま
マクロビの件では大変お世話になりました。
流れでこちらの記事を拝見いたしました。
ホメオパシーについては正直何も知らなかったのですが、まずここの記事でさらっと学習して、あえて記事中のリンクを辿らないで自分なりに少し調べてみました。何というか・・・・・。レメディーって除霊もできるんですね。代替医療とかの次元を超えているようです。マクロビより強烈で、言葉を失ってしまいました。投稿しておいて申し訳ないのですが、こちらに関しては気味悪いし、自分の理解を完全に超えちゃってます。もう何も触れたくないです。堂々と立ち向かっているハブハンさんと他の方達を陰ながら応援することと、子供や弱い立場の方がきちんとした医療が受けられるよう、祈るばかりです。
興味本位で見ていた、「ニセ科学」を甘く見ていたかな。

投稿: まつ | 2011年8月 2日 (火) 23時01分

ハブハンさま
昨日は、やや感情的になってしまい、すみませんでした。自分も子供のいる身ですので、子供が犠牲になってしまった事例、また「AかつK問題」などを知って、本当にショックでした。そしてベルリンの壁、福島の土、などのレメディーを知って、何なんだこいつら、って怒りがこみ上げてきてしまいました。
「ニセ科学」なんて信じてる人が勝手に信じてればいいんじゃね?ぐらいの軽いノリだった自分ですが、これに関しては少し考えを改めます。

投稿: まつ | 2011年8月 3日 (水) 21時46分

 まつさん、こんにちは。お返事遅くなりました。

 「除霊」だとか、「放射能に対処」とか言ってる一部団体もありますが、ホメオパシーを穏健な範囲内で楽しんでいらっしゃるかたも多いんだろうとおもいます。・・・そう思いたい(^-^;

 いっぽうマクロビでも「インフルエンザが予防できる」「ガンが治せる」みたいなこと(少なくともそう誤解させかねないこと)を吹聴する悪質なヤカラもいます。
 自分が信じてるならまだしも、商売のために他人の命を食い物にするヒトたちの行為は、ホント許せないです。

 荒唐無稽な極論を主張する一部のヒトに対して、それらを排除して全体の健全性をたもつことができないのが、ニセ科学の極めて大きな特徴だと思っています。
 科学的手法で優劣を判断しようとすると、根こそぎなくなっちゃいますし。

 シュミの範囲で楽しんでいらっしゃるかたたちを尊重したいと思いつつ、ママさんたちがハマってたりすると、すごく簡単に医療ネグレクトに結びついちゃったり、なかなか線引きは難しいですねえ。

 私などは、いろいろなトコロで勉強させていただきながらアップアップでつたない文章をあげさせていただいていますが、ご覧いただき、「ニセ科学やっぱよくない!」って感じていただけると、とても嬉しいです。
 まつさんのコメントもとても励みになります。ありがとうございます。

投稿: ハブハン | 2011年8月 4日 (木) 20時27分

科学とはなんぞや? 
短い人間の歴史のなかでこれまでに何度、科学の常識がくつがえってきたことでしょう。
http://itworks.exblog.jp/

投稿: hanage | 2011年9月 6日 (火) 10時42分

hanageさん、こんにちは。

 そうですね。しかるべき手順によって知見を更新しうるのが、科学のとても重要な特徴です。社会における科学の有用性を担保している要素ですよね。

 んで、「しかるべき手順によって」というトコロがキモなわけですね。
 ホメオパシーのヒトたちももう200年もやってるんだし、そろそろ臨床試験の手法くらいはしっかり身につけて取りくんでもいい頃だと思います。

投稿: ハブハン | 2011年9月 6日 (火) 20時04分

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