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「マイナスイオン」が科学的な地位を確立する上で必要なこと

 当ブログのエントリ「ニセ科学と未科学は厳密に分けなくてはいけない,ということ」のコメント欄でのSSFSさんとのやりとりが終了しました。内容的にはだいぶ前にオワっていたんですが,形式的にも終了です。
 当ブログのカラーとも,エントリの内容ともかみ合っていないやりとりで,まあそもそもが冗長と言えば言えるんですが,それでは勿体ないので,個人的なけじめのつもりでこのエントリを書いてみます。

 SSFSさんとやり取りしている間、「マイナスイオンを正当な科学として認めさせるには何が必要か」を考えていました。で、SSFSさんとのやり取りでそれらを提出していくことになるだろうと思っていたのですが、そういう話には金輪際なりませんでした(^-^;
 でもせっかく考えたものですから開陳しておきます。

 真剣に考えたモノではありますが10分で考えたモノでもあります(^-^; 今回文章化に当たって膨らませはしましたが、具体性はないし、いろいろ抜けが 多いだろうと思います。それらを煮詰める機会はありませんでした。この程度を想定しておけば充分だった、という事でもありますが。

1.マイナスイオンの現状は?
 まず、「マイナスイオン」の置かれている現状を把握してみました。現状と理想のギャップが、解決していくべき課題となるわけですね。

 で,私が考えた現状は以下の通りです。

(1)定義がはっきり定まっていない
(2)原理の異なる多数の商品が一緒くたに「マイナスイオン」とされ、販売されている
(3)メカニズムはおろか、効果さえ確かめられていない
(4)大勢の識者から批判が寄せられ、「ニセ科学」としての評価が固まっている
(5)一般人の間に広く浸透しているが、それがいかなるものかは理解されていない

2.じゃあ,マイナスイオンの理想の状態は?
 「マイナスイオン」が完全に科学として受け入れられている状態とはどのようなものかを考えてみました。

(1)定義が明確にされている
(2)定義に則って「マイナスイオン」を発生し、効果が明らかにされている商品が販売されている
(3)正しい知識が一般に認知されている。
(4)存在を裏付ける研究が存在し,認められている。
(5)研究が活発に行われ、新しい論文が続々と発表されている

 理想の状態は人によって詳細は違うのでしょうけど、「マイナスイオンは科学だ」と言いたい人が思い描くなら、大体似たようなものになるんじゃないかな。(※1)
 (5)などは必要条件ではないように思えますが,「マイナスイオン」を擁護する人のなかには「注目されたい」という思いがあるように感じたので,入れておきました。

3.マイナスイオンが科学として受け入れられる為に必要なコトは?
 以上のギャップを解消し、理想の状態を実現する上で、必要と思われる行動を示していきます。
 ただし「マイナスイオン」は既に「間違った道を全力で邁進してしまったニセ科学」として確固とした地位を築いていますので、対応は普遍性に乏しい上に、煩雑で達成困難なものになります。

<行動1>定義を明確に決定する
 科学用語として扱う上で、その言葉の定義が明確になっていることは最低限必要な要素です。
 「定義が明確になっている」というのは、あるモノ、あるコトを持ってきたとき、それに対して「これはマイナスイオンである」「これはマイナスイオンではない」と、一意的に判断できる、ということです。
 「一意的に判断できる」というのは、100人の人間がそれぞれ独自に判断を下した場合に、みんながみんな同一の判断を下す、ということです。

 以上の条件を満たした場合に「定義は明確になっている」と言えます(※2)。

<行動2>定義に従って既存の「マイナスイオン」を弁別する
 現状ちまたには「マイナスイオン」関連商品,情報が溢れており、様々な方式が林立しています。それらに対して「これはマイナスイオンである」「これはマイナスイオンではない」という事を明確にして提示する必要があります。

<行動3>定義外の使用を排除する
 種々雑多な「マイナスイオン」商品や情報がある限り、「マイナスイオン」に対して現在下されている「全く異なるものが一緒くたにマイナスイオンと呼ばれている」「なんだか良く分からないものだ」といった評価を覆すことは出来ません。
 定義が定まったら自浄作用を発揮し、「マイナスイオンではないもの」を排斥していかなくてはなりません(※3)。

<行動4>「マイナスイオン」という用語を新たに設け使用することが、有益であることを示す。
 定義が明確な言葉であったとしても、それを積極的に使う理由がなければ広まることはありません。きちんと受け入れられるように、その言葉を用いることのメリットをアピールしなければなりません。
 アピールの方向性はいくつかあると思いますが、思いつくところを挙げておきます。

(1)既存の用語では代用できない、独自の意味を含んでいることを示す。
(2)その用語を共有し用いることがリソースの節約になることを示す。
(3)既存の用語を代替することにより、今あるデメリットを解消できることを示す。

 「マイナスイオン」という表現でなければならない。他の(既存の)用語では代用できない、とみんなを納得させる必要があります。

<行動5>「マイナスイオン」と言う言葉を用いた研究を数多く進め、公開していく。(※4)
 無視できない実績、既成事実を作る、という事です。本来であればまずここが積み重ねられ、必要が生じて新しい言葉が作られ,浸透していくのでしょうけれど。
 一応念押ししておきますが、ここで「マイナスイオン」の用語を用いていない論文を引っ張り出すのは論外です。それは、この新しい用語が不必要なシロモノであることを示す効果しかありません。

 私に思いつくのは、以上ですね。

4.考えた後で思ったこと
 正直なところ、これらを実行したとしても目的を果たせる可能性はすこぶる低くて、もはや「マイナスイオン」という用語をまともに立て直し、受け入れさせるよりは、全く新規の用語を作り、広める方が100倍ラクだろうとは思います。でもそこはまあ、人それぞれ。敢えて困難な道を選択することもアリでしょう。
 そもそも市井の人間の手に余るステップばかりですが、それに手を出すのも自由です。

 ただ、困難を受け入れる覚悟なくして、「マイナスイオン」をまともに更正させることなど、できるはずがない、というコトについては自覚が必要だと思います。ステップをすっ飛ばして、いきなり「negative air ion」の論文を紹介して、それでなにか説得力あると思っているなんて、あり得ない。
 他人への過剰な攻撃はそもそも目的から遠ざかる行為でしかありませんが、きちんとしたプロセスを踏んでいない人がやると、最低限の正当化すらできません。

 モノゴトに優先順位を付けて、優先順位の高い順にリソースを割り振っていれば、少なくともあちこちでコメントばら撒いたり、他人のやることに文句言っているヒマなんかないはず。(※5)

5.私の結論
 わざわざ言うのが恥ずかしくなるほど自明ですが,

 こんな膨大なコストを費やして,「マイナスイオン」を科学に昇格させる意味はありません。

 それをやるべき社会的、道義的責任を負っている人・組織はありそうですけどね。

 ふう。
 はい,オワリオワリ。

 

<注釈>
※1
 「科学」の定義が一般と違う人や,そもそも本気で考えていない人は別です

※2
 「定義」にもいろいろな種類があって,化学的用語として扱う場合には更に細かい条件付けが必要な気もしますが、私がうまく理解できていないのでハショります(^-^; スミマセン。

※3
 これは現在のニセ科学批判活動に,すこぶる近いモノとなるでしょう。

※4
 結局このステップで、どれだけ強烈な成果を得られるか、という事がすべてを左右しそうです。
 みんながいっせいに注目するほどのナニか、が出てこなければ、情勢をひっくり返すのは無理でしょうねえ。しかもそれが「負の大気イオン」でも「オゾン」でもなく、「マイナスイオン」でなくてはならない(^-^;

※5
 手元に100万円しかなくて、しかも今後1年間収入が得られないと決定しているときに、その100万円でフルハイビジョンテレビを買う人がいたら、多分みんなバカにするでしょう。
 時間や労力も、リソースが限られていることはお金と全く同じなのに、「テレビを買う」人は結構多いですね。
 もちろん、リソースに余裕があるなら,生活を豊かにする方向で消費するのは当たり前なんですけどね。

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