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ニセ科学の深刻度を測る基準を検討してみる【ネタ】

 前回のエントリ「マクロビについてのちょっとした感想」のコメント欄で、どらねこさんからこんなご示唆をいただきました。

ニセ科学の一次予防、二次予防、三次予防など考えて纏めてみたら役に立つかも知れませんね。

 おお、オモシロそう!
 私は真っ先に災害対策を思い浮かべました。深刻度に合わせて対策のレベルを引き上げる、というイメージがぴったりはまります。

 こんな感じで、組織的なニセ科学対策の実施計画を策定できそうですね。
(1)ニセ科学の深刻度を評価する方法を決定する。
(2)各深刻度における対応策を策定する。
(3)各ニセ科学に対して深刻度評価を実施し、対応策を決定し、実施する。

 取っ掛かりとなるニセ科学の深刻度評価方法について考えてみました。っと、あくまでネタですからね。軽いブレインストーミングのつもりで。

 さて、深刻度は以下の計算で導き出せると考えました。

 深刻度=重大性×蔓延度

 重大性及び蔓延度について、どんな項目で評価できそうか、思いつくままに挙げていってみます。

1.重大性について検討してみる
1−1.「重大性」の定義

 そのニセ科学が浸透した場合、あるいは個人が信じた場合に、社会又は個人にどの程度大きな悪影響を及ぼすことになるかの尺度

1−2.重大性の評価項目を決定する
 ニセ科学を信じてしまった個人が蒙る悪影響と、社会に与える悪影響に切り分けて考えてみます。

1−2−1.個人に及ぼす悪影響
(1)金銭的被害
    高額な商品を購入することによる損失
    その他の損失(お布施、損害に対する補填など)
(2)健康上の被害
    商品・サービスそのものが健康を損なう
    正規の医療をネグレクトすることにより健康を損なう
(3)社会的被害
    人間関係を損なう(カルト、マルチなど)
(4)精神的被害
    価値観、精神的安定性を損なう(他の価値観の否定、洗脳など)

1−2−2.社会に及ぼす悪影響
(1)ビリーバーの周囲の人間に被害を与える(予防接種の拒否、マルチなど)
    家族・知人に与える精神的苦痛
    マルチの勧誘対象となることなどによる金銭的被害
(2)科学の運用を阻害する
    科学の信頼性を低下させ、社会における運用を阻害する
    科学に投資する事のインセンティブを下げ、研究の推進を阻害する
(3)社会の安定性を損なう
    ニセ科学排除のための不必要なコストを発生させ,必要な分野への資金の充当を阻害する
    イリーガルな行動を惹起する
(4)他のニセ科学蔓延を呼び込む(波動、○○イオンなど)
    より深刻な影響を及ぼすニセ科学への誘導として機能する。
    類似品を受け入れられやすくする。
(5)人々の健全な価値観や活動を損なう(マルチ、カルトなど)
    リスクとベネフィットを勘案して選択するという当たり前の価値観を損なう
    劇的ではないが確実に効果のある地道な社会的活動を阻害する
(6)国際関係を損なう
    非科学的な言説が日本から輸出されることによって、日本の科学技術に対する信頼を損なう
    他国人に対する偏見や差別が助長され、世論や国策に反映されることにより、良好な関係を損なう。

2.蔓延度について検討してみる
2−1.「蔓延度」の定義

 そのニセ科学がどの程度広まっているか、あるいはどれだけ広まり易い特徴を備えているかの尺度。

2−2.蔓延度の評価項目を決定する
(1)認知度
    一般の人たちにどれだけ認知されているか
    マスコミ・ブログ等における露出度
(2)好感度
    一般のヒトが情報に接した際、どれだけ良好な印象を与えるか
(3)伝達のインセンティブ
    リスペクトした人に他人に伝達しようとする動機を強く与えるか。

3.実際に評価してみる
 上で挙げた各項目を整理して評価に使ってみます。ホントなら定量的絶対的な評価が望ましいですが、ひとまずお手軽に相対評価をしてみます。

3−1.代表選手を選出する
 有名どころを3つくらいエントリしてみましょう。分かり易いものを選んでみました。

(1)水からの伝言
 良い言葉をかけると綺麗な水の結晶(氷)になり、悪い言葉をかけると汚い結晶になるという言説。
 あまりにも荒唐無稽な説であることから、当初ニセ科学とすら見なされていなかったが、心が洗われたような気になりがちなキレイな結晶写真と、総論賛成レベルの耳当たりよい道徳観とでイノセンスな人たちのココロをがっちりキャッチ。道徳の授業でも使われたりなんかしちゃったりして、一躍スターダムを斜め上に駆け上ったニセ科学の雄。

(2)ゲルマニウムネックレス
 なんとなくレアメタルっぽい名前を使えばなんとなく体にいいみたいな?
 有名スポーツ選手が愛用してしばしば話題になったりもしたけれど「体が資本の一流選手が効果を感じているくらいだからホンモノだ」と受け取るか「スポーツが一流でも、他が一流とは限らないんだなあ」と受け取るかはフリーダム!(死語)
 でも、それで商売してもフリーダム!とは行かなかったご様子

(3)インテリジェントデザイン論(創造科学)
 「神様?全然違うよ。全く関係ないよ。サムシンググレートだよ。宗教?全く違うよ。信仰の自由はあると思うよ。でもこれは宗教じゃないよ。反証不能?違うよ、反証不能じゃないよ。インテリジェントデザイン論は科学者も認めるちゃんとした科学なんだ。」
 口先だけでいくら言い張ってもムダ!とは言えないのが、インテリジェントデザイン論の恐ろしいトコロ。アメリカ合衆国では進化論と並行して授業で教えるよう州法で定められるところまで行きました
 でもまあ、キチンとした証拠が揃っているスパモンと比較するとさすがに分が悪いですよね。・・・ええ、スパモンは科学ですがなにか?

3−2.各項目に点数付けする
 項目ごとに、最も強く該当するものから3点、2点、1点の点数を与えていきます。判断しづらい項目もありますが、直感に従って無理やり判断しました。

3−2−1.重大性の評価

01_2

3−2−2.蔓延度の評価

02

 いやー、難しいですね。適当にバババっと点数付けしちゃいましたので、個別の評価の妥当性には目をつぶってください。

3−3.評価結果を集計する。
 小計を掛け合わせ,総合点を出したところ,以下のようになりました。

03

 「水からの伝言」が最も高く396点、ついでゲルマニウムネックレス231点、インテリジェントデザイン論147点の順番となりました。

4.評価結果を評価してみる
 今回の評価からは「『水からの伝言』に対して最も積極的に対応するべき」という結論が導かれました。
 私が点数付けしたものですから、私の感覚に合う結果なのは当たり前ですね(^-^; 複数の人間で合議していくと、別の結果が出るかもしれません。
 深刻度だけでなく、重大性や蔓延度も個別に見てみると、次のようなことが分かります。

(1)「水からの伝言」とゲルマニウムネックレスでは、蔓延度は似たようなものだが重大性は「水からの伝言」の方が大きいために、深刻度が大きくなっている。
(2)インテリジェントデザイン論は、蔓延はしていないために深刻度は低い点数になったが、重大性は決して低くはない(当面静観しても良いが、注視はしておくべき)。

 インテリジェントデザイン論の重大性はゲルマニウムブレスレットより高くなってもおかしくないですね。評価項目の煮詰め方がまだ甘いのでしょう。

5.今回検討した評価手法を反省してみる
 この評価方法が現時点で抱えている問題点は以下のような感じでしょうか。

(1)各項目の重み付けができていない
 私などは教育に与える影響や、マスコミへの露出はより重要な項目だと考えますが、この評価法では金銭的な被害と同等の重みしか与えられていません。項目ごとに重み付けし、係数を設定して掛け合わせるようなやり方にした方がより妥当な(納得しやすい)結果になるでしょう。

(2)定量的な評価ができない
 相対評価ではなく、絶対評価にしたいですね。
 金銭的なモノはやり易いですが、それ以外の項目も定量化して個別に評価できるようにすれば、もっと有効に使えるはず。例えば対策によってどれだけ深刻度が減少したかを調べ、対策の有効性を評価したりとか。

(3)「ニセ科学度」の評価と混同されてしまいそう
 今回の評価はあくまでもそれがどれだけ悪影響を与えているか(与えうるか)の評価であって、どれだけはっきりと「ニセ科学」と呼べるかの評価ではないのですが、最終の数字だけを出すと、ここを混同されてしまいそうな気がします。「分かり易さ」は「誤解のし易さ」とウラオモテですので、注意が必要ですね。

6.終わりに
 繰り返しになりますが、このエントリはあくまでネタです。
 マトリックスにしたり、グラフにしたり、具体的な数字にしたりすることは、第三者に対する説得力を増す上で有効な手段ではあるんですが、恣意的な数字を作り印象操作を行うことは、ニセ科学が多用する手段でもあります。
 ホンキでやろうとしたら、充分な妥当性を持たせるために慎重な検討を行う必要があるでしょうね。

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コメント

こんにちは。
判定結果はともかく、おもしろい試みだと思います。

>(3)「ニセ科学度」の評価と混同されてしまいそう

両方(というか、重大性・蔓延度と併せて3軸?)あって、並べて提示できるとベストなのでしょうけれどもね。

以前、こんなことを考えました。

お手軽「ニセ科学」評価チャートβ(1)
http://shibuken.seesaa.net/article/72396853.html

お手軽「ニセ科学」評価チャートβ(2)
http://shibuken.seesaa.net/article/72604788.html

いずれも恣意的とのそしりは免れないレベルのもので、そのまま頓挫していますが、なにか目安があるといいなあ、と同じようなことを考えたヤツがいた、というお話として。

投稿: 亀@渋研X | 2009年7月31日 (金) 08時59分

あ、なるほど。災害対策でしたか。
私のイメージは生活習慣病対策みたいな感じです。リハビリ的なものまで含めたら面白いなぁ、なんて考えておりました。

こうやって多角的に分析すると傾向が見えてきて面白いですね。調査対象を増やすと思わぬ共通点が見えてくるかも知れません。
参考になりました。

投稿: どらねこ | 2009年7月31日 (金) 13時07分

 亀@渋研Xさん,こんにちは。コメントありがとうございます。

>判定結果はともかく、おもしろい試みだと思います。

 有り難うございます(^-^) 妥当な結果を得ようとすると,もっと検討が必要ですね。微妙なニセ科学で評価すると,今のままでは違和感の強い結果が出てしまいそうです。

>両方(というか、重大性・蔓延度と併せて3軸?)あって、並べて提示できるとベストなのでしょうけれどもね。

 そうですね,私は特にニセ科学かどうかを重視しているので,項目としては独立していた方がアピール度は高いかも知れません。今はニセ科学度に関する項目が重大性と蔓延度の両方に散らばっていて分かりづらいですね。

>以前、こんなことを考えました。

 おー,これはマサに,トンデモ度をはかる指標ですね。レーダーチャートもインパクトあるなあ。非科学とニセ科学を並べると違いがあらわになって面白いかも知れませんね。
 評価の基準を明らかにして分かり易い形で示すのは,一般へのアピールの手法として有効な場面がありそうですね。まあ,あらゆる側面をカバーするのは無理でしょうし,あまり有効すぎても結果だけが一人歩きしそうで怖いですけど。

 ブログを始めてから巡回場所が一気に増えて,渋谷研究所X様もブックマークさせて頂いてはいるのですが、過去ログはまだあまり追えていないです(^-^; どこかで一度おさらいしなくちゃ。

 ご紹介,有り難うございました。

投稿: ハブハン | 2009年7月31日 (金) 21時39分

 どらねこさん,こんにちは。前回いただいたコメント,ネタにさせていただきました。

>私のイメージは生活習慣病対策みたいな感じです。リハビリ的なものまで含めたら面白いなぁ、なんて考えておりました。

 あ,ニセ科学にハマっちゃった(ハマっちゃいそうな)人のカウンセリングみたいな感じですか。質問紙で自己診断できるようにしたりして・・・ヤバ,それもオモシロそうw
 ちょっと専門的な知識が必要になりそうですけど,一度検討してみるとそれをキッカケにして考えを深められそうですね。・・・えーと,キタイしてます( ̄▽ ̄)

>こうやって多角的に分析すると傾向が見えてきて面白いですね。調査対象を増やすと思わぬ共通点が見えてくるかも知れません。

 こういう機械的なやり方はどうしても乱暴になっちゃいますけど,逆に個人のバイアスを排除できる部分も有って,思いもよらぬ,でも妥当な結果が出てきて,結構有効に使えたりしますよね。もっとちゃんと作れば,ですけど(^-^;

投稿: ハブハン | 2009年7月31日 (金) 21時51分

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