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予防接種のリスクと,接種しないことのリスク

 先週,インフルエンザの予防接種を受けました。新型じゃなくて,季節性の方です。
 新型が話題ですけど,季節性インフルエンザだって,毎年死者が出ています。

 かつ,インフルエンザでは「ワクチンには効果がない」「ワクチンは有害だ」などと言った言説が流布されています。
 以前ホメオパシーのエントリでもご紹介しました。

「インフルエンザ・ワクチンは打たないで!」

インターネット上でも「インフルエンザワクチン+有害」と言ったキーワードで検索すると,いくつも情報が引っかかります。

 予防接種で副作用が発生し,死亡例もあることは確かです。
 ワクチンの効果はどうなのか。ワクチンによる副作用はどうなのか。改めて調べてみました。

1.インフルエンザによる死亡者数
死因簡単分類別にみた性別死亡数・死亡率(人口10万対)

 リンク先の第7表を見ると,平成18年の死亡者数は865人となっています。インフルエンザに感染し,死亡しても,直接の死因が肺炎などだと死亡数には数えられないそうで,「超過死亡」という概念を入れるともっと増えるそうです。

厚生労働省_新型インフルエンザに関するQ&A

 感染者数は推計年間1000万人程度,死亡者数は1万人前後だそうです。
 感染者の死亡率をざっくり計算してみると0.1%。「0.05%」という数字を別のところで見たのですが,そちらの元ネタは分かりませんでした。まあ感染者1000〜2000人に1人,死亡するということですね。

2.インフルエンザワクチンの有効性

 こんなニュースが。
<インフルエンザワクチン>昨冬の効果 有効率27% [毎日新聞]

 昨冬はインフルエンザが大流行したが、予防接種のワクチンの効果は今一つだったことが、日本臨床内科医会(事務局・東京都千代田区)の調査で分かった。
(中略)
 日本臨床内科医会は会員医師のいる全国43医療施設で、自ら希望してインフルエンザワクチンの予防接種を受けた人1万4364人と、受けなかった人3101人を登録。その後、今年4月30日までにインフルエンザにかかったかどうかを調べた。
 その結果、接種を受けながら発症したのは696人(発症率4.8%)。逆に受けない人のうち発症したのは206人(同6.6%)だった。接種でインフルエンザにかかる率がどの程度低下するかを見る「有効率」は約27%となった。
 同内科医会はワクチンの効果を検証するため、01年から02年にかけての冬から調査を始め、今回で4回目になる。これまでの発症率はワクチンを接種したグループでは、4年前の冬から0.3%▽1.9%▽1.7%▽4.8%と推移。一方、接種しないグループでは、それが1.2%▽5.9%▽2.4%▽6.6%だった。
 「有効率」は最初の2冬で比較的高く、75%と68%を記録したが、昨冬と一昨冬は3割を切った。
 河合班長は「昨シーズンは有効率は低めだった。インフルエンザウイルスは変異が早く、ワクチンの型と流行する型とのずれはある程度避けられない」と話している。

 この記事から分かるのは,こんなことでしょうか。

  • ワクチンを接種していても,インフルエンザに感染する可能性はある
  • 流行する型の予想が当たると効果は高くなり,外れると効果は低くなる(計4回の調査で,差が大きい時で4倍,小さい時で1.4倍程度)
  • 当たり外れが有るにしても,ワクチンを接種していると非接種の場合に比べて感染率は低くなる

 予防接種によって感染率が変わるのであれば,予防接種率の変動によって感染者との接触確率が変化するはずだから,インフルエンザワクチンの効果を示す調査として見るとやや片手落ちな気もします。まあそれでも効果はあると判断できますね。

3.予防接種の副作用による死亡者数

平成18年度のインフルエンザワクチンによる副作用の報告等について

 インフルエンザワクチンの推定使用量・・・1877万本

副作用報告数・・・107症例(0.0005%)
副作用による死亡者数・・・5人(2.7×10^-5%)
副作用による後遺症例・・・8人(4.3×10^-5%)

 約1900万本に対し13人ですから,約144万人に1人の割合で,少なくとも後遺症が有る程度の副作用が発生することになります。

4.その他の情報
 その他,[医療従事者向け]インフルエンザQ&Aより抜粋。

・乳幼児,高齢者にはワクチンの効果が小さい(無いわけではない)。
・予防接種は感染率だけでなく,重症化の可能性を低下させる。

5.まとめ
 それぞれに書いたことをもう一度まとめてみます。

(1)インフルエンザワクチンは,感染を完全に防いでくれるわけではない。
(2)流行する型と予想とのズレによって当たり外れは有るが,おしなべて予防接種によって感染率は低下する。
(3)感染者の1000〜2000人に1人が死亡する(0.05〜0.1%)。
(4)ワクチン接種により,144万人に1人が後遺症のある副作用に見舞われる,もしくは死亡する(0.00007%)。
(5)乳幼児,高齢者にはワクチンの効果が小さい(無いわけではない)。
(6)ワクチンは感染率に加えて,重症化の可能性を低下させる。

 「ワクチンには効果がない」「有害だ」と言う主張は,多分(1),(2),(4)辺りが元になって生まれてきているんだろうな,と思います。特に感染率が7%から5%に下がる,というのは,個人レベルではメリットを感じにくい数字かも知れません。でも,社会的には意義のあることなんだと,私は改めて感じました。
 社会には,インフルエンザに対してより高いリスクを負っている人たちもいます。そういう人たちが感染者に接触する機会を減らせるだけでも,充分有意義と言えるのではないでしょうか。

6.参考リンク

国立国会図書館_インフルエンザについて調べる

国立感染症研究所_感染症情報センター_インフルエンザ

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