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続・読書感想_水は答えを知っている

 

 前回はつい逃避に走ってしまいましたがw 真面目な書評も挙げておこうと思います。
 と言っても、2001年発行の本ですから、私が駄文を連ねるよりも有用な書評がすでにたくさんあります。「水からの伝言」に関する情報も含め、参考になるところをいくつかリンク。

<リンク1>
水は答えを知っている - Skeptic's Wiki
<リンク2>
「水からの伝言」関連リンク集-選定版
<リンク3>
【作成中】『水からの伝言』の基礎知識【基礎編】

 ですので、私は自分の感じたコトを中心に、以下の2点からまとめてみます。

(1)本書のどこを信じてしまうのか
(2)本書はどのような役割を果たしているのか

1.本書のどこを信じてしまうのか
1-1.写真の持つ説得力

 まず、前回紹介した「秘密の動物誌」の中のページを見てみましょう。学名ソレノグリファ・ポリポディーダ。12本の足を持つヘビ、です。モチロン架空の生き物。

2010021400003

 この本では、この荒唐無稽な生き物の存在を信じさせるためにあの手この手が使われていて、それを逐一見ていくのも楽しいのですが、今回は細かいところは割愛。
 前回ご紹介した通り、著者たちは制作ノートで「科学的文体」の効果を強調していましたが、初めて見たとき私の印象に残ったのは、写真が訴えかけてくる説得力でした。
 今となってはやや古さを感じさせるものではありますが、いや、当時も「これ剥製じゃんっ! みんなポーズ同じじゃね?」などとトモダチといっしょに笑っていたのですが、同時に「もしかして」と思わせる部分を感じてもいたのです。終わりまで読み進め、制作ノートを読んだ時には、「ああ、やっぱりね」と納得しつつ、チョッピリ残念でもあったのでした(^-^;

 添付写真を見て「なんだ、実際の動物のパーツをツギハギしただけじゃんか」と感じるヒトもいるでしょうが、私はこの写真の説得力は、まさにパーツが「現実」であるところから発生していると考えています。もしこれが、実在の動物とは似ても似つかないパーツから組み上げられた、完全オリジナルだったとしたら、たぶん信じるヒトは少ないでしょう。私たちの頭の中で実在する動物の知識とリンクするからこそ、信じる気持ちが強化されるのです。

 私たちは、雪の結晶が綺麗なものであることを知っています。その現実が知識として私たちの中にあるからこそ、「水からの伝言」、「水は答えを知っている」の中に掲載された結晶写真を見て、それを信じるヒトが出てくるのでしょう。
 もし写真が載せられていなかったら、あるいはどんなに綺麗であっても、全く見たことも無い形をしていたら、たぶんそれほど信じられずに終わっただろうと思います。

1−2.読者の価値観に一致する結果
 本書では、水に見せる言葉の種類によって、結晶の形が変化すると主張しています。

 水にありがとう→キレイな結晶
 水にばかやろう→汚い結晶

 もしこれが逆だったら、どうだったでしょうか。

「水に『ムカつく・殺す』という文字を見せたら、素晴らしく美しい結晶が!」
「『愛と感謝』という文字を見せたら、醜く潰れたような形の結晶に!」

 主張としてはまったく同じですよね。でも、受け入れられなかっただろうと想像します。
 何を美しいと思うかは個人の価値観による、とは言いますが、私はやっぱり、雪の結晶は美しいと感じます。グチャグチャしている写真は、やっぱりグチャグチャしてる。
 「美しい」と「ありがとう」を結びつけることで、それを「事実」として受け入れ易い状態が作られているんだろうな。
 ありがとうは良い言葉、ばかやろうは悪い言葉、という価値観とセットになって受け入れられるのでしょう。

(p.24より引用)

 この結果は、まさにおどろくべきものになりました。「ありがとう」という言葉を見せた水は明らかに、六角形のキレイな形の結晶を作りました。それに対して「ばかやろう」の文字を見せた水は、ヘビーメタルの音楽と同じく、結晶がバラバラに砕け散ってしまっていました。
 同じように、「しようね」という語りかけの言葉を貼った水は形の整った結晶になり、「しなさい」のほうの水は、結晶を作ることができませんでした。
 この実験が教えてくれることは、私たちが日常口にしている言葉がいかに大切か、ということです。よい言葉を発すれば、そのバイブレーションは物をよい性質に変えていきます。しかし悪い言葉を投げかければ、どんなものでも破壊の方向へと導いてしまうのです。

 キレイな結晶を作る水のほうが良い性質だなんて、誰が確かめたの? 実はグッチャグチャの方がイイのかもよ? なんて言ってもはじまらなくて(^-^; 政治家が能力ではなくルックスや雰囲気や知名度で選ばれてしまうのと同じかも。
 外見に頼らず、味だけで勝負している、もんじゃの偉大さが分かりますね(違)

1-3.本来の定義を無視して乱用される科学用語
 本書の中には科学用語が頻繁に登場します。一般人が耳にしたときに、なんとなく科学を連想させる言葉も散りばめられています。
 量子力学、原子、波動、エネルギー、周波数、共鳴、クラスター、etc, etc...

 ただ、書かれている文章は、科学的には間違っているか、無意味な内容の羅列です。飛ばし飛ばし引用してみましょう。科学に造詣の深い方は、特に不快に思われるかも知れませんのでご注意ください。って、いまさらか(^-^; うーん、どのページもクオリティ高くて、捨てがたいw

(p.68より引用)

 しかし、いま量子力学などの科学の世界では、物質とは本来振動に過ぎないと言うことが常識になっています。
(中略)
 電子の数と形によって、原子は固有の振動を持つことになるのです。

 持つことにはなりません。

(p.69より引用)

 「色即是空、空即是色−目に見えるものには実態がなく、眼に見えないものには実体がある」
 昔お釈迦様がいわれたとされる、この謎のような言葉が、奇しくも現代科学によって実証されたというわけです。

 実証されていません。

(p.72より引用)

 さて、万物が振動しているということは、どんなものでも音を出しているといいかえてもよいでしょう。

 よくありません。

(p.106より引用)

 今確認されている元素の種類は、百八から百十一あるといわれています。私は、百八ではないかと思っていますが、自然界にあるこれらの元素をすべて併せ持っているのは、人間だけではないのでしょうか。

 併せ持っていません。

(p.107より引用)

 仏教では、人間は百八の煩悩をもっているとされています。煩悩とは、私たち人間が生まれながらにもっている迷い、執着、ねたみ、虚栄などの心で、煩悩が人生の苦しみをつくり出します。私の考えは、百八の煩悩というのは人間が体内にもつ百八の元素にそれぞれ対応しているのではないか、というものです。

 対応していません。

 ・・・ふう。
 まるで言葉のレゴブロック。これだけ自在に分解し、パッチワークできれば、世の中に言えないことなどナニひとつ無いでしょう。
 この発想力・連想力のベクトルはどうも、オヤジギャクに近いような気がします。あ、私はオヤジギャク、好きですよ。平和でいいですよね。リアクションには困るけど(◯◯さん、いつも「うわぁ・・」とか言っちゃってごめんなさいw)。

1-4.強迫観念を刺激して誘導する
 むかし、「買ってはいけない」っていうオカルト本がありましたよね。本書にはそれと同様の、現代社会の危険を煽り立てる文章が散りばめられています。電磁波がどうの、水道水の塩素消毒がどうの、環境汚染がどうの・・・
 想像力の枝が、自分の視界よりも狭い範囲にしか届かないヒトにとっては、いつの時代、どんな環境に生きようと、常に「今がサイアク」「隣の芝生は青い」「なんでワタシだけ」。そういう人達の琴線に響く内容が盛りだくさんです。

 プロローグからしてこんな感じ。

 この本を手にとっていただいたみなさんは、この時代をどんな風に生きていますか?いえ、もっとシンプルに質問するならば、あなたはいま、幸せですか?
(中略)
 ほとんどの人が、この質問に胸を張って答えることはできないのではないのでしょうか。実に多くの人が、自分の生き方に自信をもてずにいます。私たちを苦しめているのは、いったい何なのでしょうか。この世界に何が起こっているのでしょうか。
(中略)
 私たちは、日々の生活を送るだけでも疲労困憊です。新聞やテレビからは情報があふれ、仕事では、取引先とのトラブル、誤解、行き違い・・・。私たちを悩ませる要因はあらゆるところに転がっています。
 世界を見回してみても、同じです。経済摩擦、国内紛争、人種差別、環境問題、宗教をめぐる戦争、ありとあらゆるトラブルが、この小さな地球の上にあふれているようにみえます。

 ・・・はっきし言って、ここに挙げられている程度のコトで幸せが失われてしまうのなら、悠久の過去から未来永劫にいたるまで、この世界に幸せなどビタイチ存在しない! と断言してしまえますが、それは措いて。
 取引先とのトラブルと人種差別を「同じ」って言ってしまえる感性に言いたいこともあるけれど、それも措いて。

 他人の不安を掻き立てる上で、極めてオーソドックスな表現・文言ですよね。テンプレートと言っていいくらい。思春期マッタダナカの中学二年生のハートにガツンと響く、いい文章です。
 いや、冗談抜きで、こういう問題でココロを悩ませる時期が、人生には必要だと思います。
 私たちオトナは、まだ幼い彼らが変な宗教にハマったり、変なニセ科学にハマったりせず、安心して悩める世の中を用意しておいてあげたいものですね。
 そうやってしっかり悩み、自分なりの答えを見つけ出していれば、

 だれもが、このアリ地獄のような世界の中で、救いを求めています。だれもが答えを求めているのです。その一言で世界が救われるような、シンプルで決定的な答えを探しつづけているのです。

 「シンプルで決定的な答え」など、危険極まりないシロモノでしかないことに、イッパツで気づけるオトナになれるのだと思います。

2.本書はどのような役割を果たしているのか
 さて、ココからは、本書がどのような目的を持って書かれているか、それを考えていきたいと思います。と言っても、意図的にそうしているかどうかは分かりません。単に、完成形を見ると、こういう機能を備えているように見える、ということです。

2-1.フルイとしての役割
 普通にこの本を読んで、頭から信じる人はそうはいないような気がします。「元素は全部で108個に違いない。なぜなら人間の煩悩が108だから」なんて言うのは「それはひょっとしてギャグで言っているのか」ってレベルですよね。
 でも、中には信じちゃう人もいる。

 私なんかは1ページごとに本を閉じて、目を閉じて、深呼吸して、気を落ち着かせながらでないと読み進められない内容なんですけど、普通に読めちゃうヒトもいるし、感動するヒトもいるのですね。

 信じ方のレベルも、ヒトそれぞれ。
 煩悩wはさすがに信じないけど、琵琶湖の水が綺麗になった、と聞いて感心する人、半信半疑だけど、写真で見せられると、もしかしたらホントなのかも・・・と思ってしまう人、などなど。

 この本は一種のリトマス紙。このレベルを信じてしまう人を選り分けるフルイになっています。
 え、フルイにかけて、どうするのかって? そりゃもちろん、マーケティングに利用するんです。

2-2.言い続ければ本当になる
 同じ情報に何度も触れていると、それを信じる方向にココロが傾いていきます。複数のツテから別々に聞いたりすると、特に。

Aさんから聞いた・・・アホちゃうか
Bさんから聞いた・・・あーあ、コイツもかよ
Cさんから聞いた・・・って、あれ?
Dさんから聞いた・・・もしかして
Eさんから聞いた・・・もしかしたら
Fさんから聞いた・・・ホントなの?

 で最終的に自分が「Gさん」になって、ヒトに広めるようになってしまいます(デマの構造そのものですね)。誰かに話すという行為そのものが、確信を強める働きもありそうです。
 実はお互い半信半疑なんだけど、お互いに「○○さんも信じてるんだし・・・やっぱホントなんだよね」って思ってたりとか。

 だから、ヒトに信じさせようと思ったら、とにかく同じ情報を、とにかく大量に発信し続けるコトが有効です(その意味で、マイナスイオンの氾濫に際して大企業が果たした役割はとても大きい)。
 また、書籍という形態をとっているコトは、読んだ人に「本として一般に販売されるほど浸透しているんだ」という印象を与えられるだろうと思います。自費出版だったとしても。

 え、そんな印象を与えてどうするんだって? もちろん、マーケティングに利用するんです。

2-3.上級編に向けてのステップ
 これは何回か書いてることですが、ニセ科学はしばしば階層構造を備えています。到底信じられないような荒唐無稽な内容も、受け入れやすいことから徐々にステップアップ、いつの間にかすんなり信じてしまうように。大丈夫、コワくないよ?

ステップ1:
 草花は丁寧に世話をしてあげると、キレイな花を咲かせてくれますよ。
ステップ2:
 落ち込んでいる時に、たった一言で救われることもある。言葉にはチカラがあるんです。
ステップ3:
 草花は水やりの時などに言葉をかけてあげると、キレイな花を咲かせてくれますよ。
ステップ4:
 水にありがとうと書かれた紙を見せると、キレイな結晶になるんです。
ステップ5:
 良い言葉は良い波動を持っていて、それが良い影響を与えるんです。言霊です。
ステップ6:
 良い波動は水を美味しくしてくれます。
ステップ7:
 良い波動は体を健康にしてくれるんです。アトピーも治ります。
ステップ8:
 良い波動はガンすら克服できるんです。
ステップ9:
 死んだ金魚も波動で生き返ります。
ステップ10:
 波動測定器は1台375000円です。
ステップ11:
 身体の波動を調える各種グッズも取り揃えてございます。

 「草花育てんのメンドクサッ」と言うかた向けに「クラシックでお酒がまろやかルート(※1)」もございます。さあ、無理なく続けて、キミも頂点を目指せ! 受け入れ態勢は万全です。
 モチロン、すべてが商売がらみというわけでもないだろうし、どこまで意図的なものかは分かりませんが、よくできてると思います。

3.最後に
 これ、原著にしっかり目を通しさえすれば、むしろ信じる人は少ないでしょう。少ないかも。少ないとイイなあ・・・結晶写真はホンモノだ! くらいの人は多いかも。
 でも「元素の数は百八つ! 人間のボンノーの数なのだだだっ!」って言われて、「おおぅ、なるほどっ目からウロコだぜっ!」って思うヒトはさすがにいない・・・よね?
 まあ、そんなにはいないだろうと希望的観測を交えつつ、結晶写真と一部の言説だけが、マスコミやら教育現場やらクチコミやらでダイジェスト的に紹介されることの方が、むしろ問題だなあ、と改めて思いました。
 学校で、道徳の授業で教えられている、と言った話もありますが、先生もたぶん原著を読まずに断片的な情報をつまみ食いしてしまったのでしょう。いくらなんでもこれを読んだ後で「でも道徳ならいいよね」なんて考えるとは思えない(^-^; きっとTOSSとか見ちゃったんだよね。
 先生も忙しいなか、混淆している玉石を選り分けるのは大変だろうけれど、子どもたちのために、もうひと踏ん張りして欲しいです。なんとかフォローの仕組みを作れんもんかねえ。
 って、TOSSはまさにそれを目的にしているんだろうけれど、なんかいろいろ感染拡大の方向で機能しているようだし、困ったもんです。

 なんかどんどんウツな方向にイッてしまって際限ないので、「はじめに」に書かれている一文をご紹介して終わりにしたいと思います。

 さらにこの本を読んでくださるすべてのみなさんに、心より愛と感謝をささげさせていただきます。それから最後に、この宇宙のすべてのお水にも、尊敬と感謝をささげます。

 うーん・・・じゃあ、私も表明しておきましょう。

 私は私の愛を、私の大切な人たちにささげます。
 そして、私たちの愛や善意が、悲劇や争いのタネにならないような社会の実現・維持に努めます。

 水は美味しくいただきます。

<注釈>
※1
 「微振動でお酒がまろやかに」だったら納得できます。きちんと検証されたら、ね。

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