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「薬事法」を読んでみた

「◯◯でたいていの病気は治せるんですよ。ガンも治るし、アトピーだって治せちゃいます」
「あの・・・それ、薬事法違反ですよ」
「うざっ! 細かいことをネチネチと! いいものを広めたいだけなのに、うっさいわねっ!! 人のいい気持ち善意に、水さしてんじゃないわよっ!」

みたいなやりとり、ときどき見かけますよね。いや、善意/悪意だとか正しい/正しくない以前に、法律に違反してたらダメたろ、と思うんですが、よく考えて見ると、私も薬事法とか、知らないや(爆)
 法律の名前だとか、言及されるときの文脈だとかで、「ああ、薬じゃないものを病気に効くかのように言っちゃいけないんだな」くらいの認識。
 ということで、ちょっと読んでみました。

 今は法令データ提供システムっていう、便利なものがあるんですねえ(※1)。法律って、やたら付表や施行令や施行規則を参照しなくちゃならなくて、内容を把握しようとすると大変なんですが、このサイトならキーワードでの検索や、別ウィンドウでの関連文書の参照など、便利に作られています。そうは言っても、やっぱり法律文は読みづらいですけど(^-^;

<言葉の定義>
 どんな文章を読むときでも、最も大切なのは言葉の定義をしっかり把握すること、ですよね。意味を間違えたまま読めば、理解が間違うのは当然のこと。私たちがよく使う馴染みの深い言葉だと、ついスッと読み飛ばしてしまいがちですが、そういう言葉こそ注意深く確認しておかなくてはいけません。
 例えば「医薬品」という言葉は、こんなふうに定義付けされています。

第二条  この法律で「医薬品」とは、次に掲げる物をいう。
一  日本薬局方に収められている物
二  人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であつて、機械器具、歯科材料、医療用品及び衛生用品(以下「機械器具等」という。)でないもの(医薬部外品を除く。)
三  人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であつて、機械器具等でないもの(医薬部外品及び化粧品を除く。)

 ・・・うう、早くもメマイが (;´д`) ちなみに「日本薬局方」って言うのは、こんなのです(リンク先からPDFファイルを開けますが、30MB近くあるので注意)。
 「お薬」って言うと、カプセルや錠剤で経口摂取するモノがパッと思い浮かびますが、治療目的でなくても、「身体の構造又は機能に影響を及ぼす」モノも該当するんですね。ただし、機械器具等や医薬部外品、化粧品は除くと。
 んじゃあ、なにが医薬部外品や化粧品なのかって言うと、それらについても定義が定められています。

2  この法律で「医薬部外品」とは、次に掲げる物であつて人体に対する作用が緩和なものをいう。
一  次のイからハまでに掲げる目的のために使用される物(これらの使用目的のほかに、併せて前項第二号又は第三号に規定する目的のために使用される物を除く。)であつて機械器具等でないもの
イ 吐きけその他の不快感又は口臭若しくは体臭の防止
ロ あせも、ただれ等の防止
ハ 脱毛の防止、育毛又は除毛
二  人又は動物の保健のためにするねずみ、はえ、蚊、のみその他これらに類する生物の防除の目的のために使用される物(この使用目的のほかに、併せて前項第二号又は第三号に規定する目的のために使用される物を除く。)であつて機械器具等でないもの
三  前項第二号又は第三号に規定する目的のために使用される物(前二号に掲げる物を除く。)のうち、厚生労働大臣が指定するもの

3  この法律で「化粧品」とは、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。ただし、これらの使用目的のほかに、第一項第二号又は第三号に規定する用途に使用されることも併せて目的とされている物及び医薬部外品を除く。

 まあ、どんなに厳密にしてもどこかにグレーゾーンが残るわけですけど、一般的な判断をするには十分な程度に、細かく決められているんですね。

 ・・・ええと、この調子で引用していくととんでもなく長くなりそうですので(^-^; 特に関係が深そうな内容を、私なりの言葉で平易にまとめてしまいます。その分厳密さはなくなっちゃいますがご容赦ください。また、医薬品その他を実際に扱う際には、以下に取り上げない部分も含め、すべての条文が重要なのは言うまでもありません。

<ナニをしなくちゃ(しちゃ)いけないの?>
 さて、「ガンも治せちゃう◯◯」を医薬品として扱い、広めたいなら、どんなコトをしなくてはならない(してはならない)のでしょうか。

(1)
 しかるべき許可を受けなければ、薬局(販売又は授与の目的で調剤の業務を行い、また販売する場所)を設置したり、製造したり、貯蔵したり、陳列したり、販売、授与したりしてはいけません(第四条第一項、十二条第一項、十三条第一項及び二十四条第一項)。
(2)
 薬局は薬剤師が管理しなければなりません。(第七条)
(3)
 製造・販売しようとする場合、品目ごとに承認を得なければなりません(第十四条第一項)。
(4)
 ただし、承認を得るためには、キチンと効能、効果があると認められないといけません。(第十四条第二項三号)
(5)
 また、製造管理又は品質管理の方法が、厚生労働省令で定める基準に適合していると認められなければ、やっぱり承認されません。(同上)
(6)
 処方箋がなければ、指定の医薬品を販売し授与してはなりません。(第四十九条第一項)
(7)
 指定の医薬品を販売・授与したら、記録を残さなくてはなりません。(第四十九条第二項)
(8)
 医薬品に添付する文書や、梱包などに、虚偽や誤解を招くこと、承認を受けていない効能又は効果、等を記載してはいけません(第五十四条)。
(9)
 虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはなりません(第六十六条第一項)
(10)
 医者をはじめとして、誰かがその効果を保証しているかのように誤解されるような広告をしてはいけません(六十六条第二項)
(11)
 製造販売の承認をもらっていない医薬品の広告をしてはいけません(第六十八条)

 ・・・あららら。もしキチンと医薬品として認められちゃったりしたら、クチコミでとか、通販でとか、友達同士でとかいったやり方はできなくなりそうですね。まあ、第十四条とか見てると、そもそも医薬品として認められること自体、果てしなくムズカシしそうですが。

<定義に当てはまればそれは「医薬品」>
 「えー、そんなメンドいことになんの? じゃあ、医薬品じゃなくていいや」っていう場合はどうでしょう。そういうニゲを打ってる文章、ときどき見ますよね。
 でも「医薬品じゃありません」って口で言えば医薬品じゃなくなる、わけじゃなくて、冒頭で挙げた定義に合致すれば、それは法律上「医薬品」と見なされ、規制されることになります。
 もっかい定義を参照してみましょう。

第二条  この法律で「医薬品」とは、次に掲げる物をいう。
一  日本薬局方に収められている物
二  人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であつて、機械器具、歯科材料、医療用品及び衛生用品(以下「機械器具等」という。)でないもの(医薬部外品を除く。)
三  人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であつて、機械器具等でないもの(医薬部外品及び化粧品を除く。)

 この内容に該当したら「医薬品」になります。
 つまり、医薬品じゃない、ってことにしたいなら「これ、ガンに効くから」なんてコトは金輪際言えないし、そのように使うことは出来ない、ってことです(※1)。当然「インフルエンザ予防に!」も「アトピーに劇的な効果!」もダメですよね。

 私の最初の解釈、「薬じゃないものを病気に効くかのように言っちゃいけない」はちょっと違ってて、「病気に効くかのように言った時点でそれは『医薬品』と見なされる。そして、医薬品に対するさまざまな規制から逸脱しているから薬事法違反」ってことになるわけですね。

<終わりに>
 ・・・てな感じで読むには読んだんですが、えーと、合ってんのかな(^-^;
 理解したつもりでも、それが正しい解釈になっているかどうかは、自分で判断できないですね。やっぱしきちんと把握するためには、専門家に聞いたほうがよさそうです。

 医薬品として扱う場合も、そうでない場合も、踏むべき手順と、守るべき決まりがあります。
 「薬事法違反です」って言われたとき、否定されたと思ってカチンときちゃう前に、まずはきちんと調べて、もしホントに違反してるなら、修正しなきゃいけないんじゃないかな。
 「いいコトしてるんだから、法律やぶってナニが悪いのよ」とか思っているわけではない・・・ですよね?

<注釈>
※1
 「法庫」はムカシからあったような気がします。

※2
 実際に読んでみて感じましたが、健康食品の売り文句とかにも、けっこう微妙なものが混ざっていますね。「健康に寄与する」とか、「健康のバランスを整える」とか。
 「元気ハツラツぅ?」くらいなら問題ないんでしょうけどw

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コメント

私も専門家ではないので、あんまり役に立ちませんが、ハブハンさんの理解通りで問題ないと思います。
1. 効果効能を主張すると「医薬品」の定義に合致する。
2. 「医薬品」の規制に従わないと薬事法違反となる。

で、実際のところ健康食品はもちろんのこと、コンビニで売っているような普通の食品でも、厳密にいえば規制にひっかかるものがあります。東京都福祉保健局なんかでもガムの例をあげてたりしますね。
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kenkou/kenko_shokuhin/ken_syoku/ihan_k/gamu/index.html

その他、以下のページで取り上げられているように、体験談だけでもダメな例がありますし、「おススメ」だけでもダメな例があるようです。
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/anzen/supply/jirei.html

さらに、本格的に裁判などで扱う場合は、形式判断ではなく実態判断になりますので、消費者が効果効能を期待するような書き方になっていれば、明確に効果効能をうたっていなくても、規制対象となりえます。

規制対象だからといって実際に規制されているかは別問題ですが…。

投稿: lets_skeptic | 2010年11月10日 (水) 09時24分

lets_skepticさん、詳細なご説明、ありがとうございます。

 ご紹介いただいたリンク先を拝見すると、どこかで聞いたことのあるフレーズが、のきなみアウトっぽいですね(^-^;
 「潤い美肌」もダメな場合があるのか・・・

 定義を厳密に適用すれば、代替医療で使用されるモノは実態として「医薬品」にならざるを得ないはず。
 代替医療関係者が法から逸脱しないようにしようとしたら、正規のステップを踏んで効果を証明していくか「医療」を名乗ることをやめるかの二択になりますが、うーん、どちらも選べないモノは多そうですねえ(^-^;

投稿: ハブハン | 2010年11月10日 (水) 22時50分

医薬品の定義の筆頭に来ている「日本薬局方」ですけれども、1700ページもありますと、非常に多くの物質が規定されています。
例えば、お手元に第15改定版があったら、そのp595(pdf版646/1786)をご覧ください。左上に「常水」とあります。要するに、水道水のことです。
主な用途は、薬を飲んだり、精製水の原料になったりですけれども、これに「認められていない効能」を謳うと、薬事法違反「にも」なります。
怪しげな「活水器」では、そこまで悪質なものは「まだ」無いようで、景表法や特商法で規制されていますが、重大な人的被害とか出たら、当局も強行手段を採ることが可能です。

今回のホメ騒ぎによって、次回改定のときには、「ショ糖」の項目が追加になるかもしれませんね。そうでなくても、医薬品の試験に多用されているのですから、載っていないほうがおかしいのです。

実際は、医薬品になりえても、何段階かのレベルがありますから、水や砂糖が薬局でしか買えないことには、なりません。それでも、局方は、目次を見るだけで、「えーっ!こんなのがー」って、けっこう楽しめます。

投稿: mimon | 2010年11月12日 (金) 01時54分

mimonさん、こんにちは。

 んんん、そうか、水も記載されているんですね。言われてみればナルホドそりゃそうかって思うんですけど、私の知識はまだまだ付け焼刃で、キチンと内容を把握し正しく判断するのは難しいです。

 まあ、私は自分で判断せずに専門家の指示に従おうと思いますが(^-^) きちんとした知識を身につけていない市井の人間が自分で判断しちゃったら、法から逸脱して当たり前ですよねえ。

 大半の「善意の人」はそもそも自分が法に抵触しているという意識もなくてイチャモン付けられてるように感じるんでしょうけれど、その場は反発しちゃったとしても、後でちょっとでも自分で調べてみて欲しい・・・って、やっぱムリなのかなあ。

投稿: ハブハン | 2010年11月13日 (土) 00時06分

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