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読書感想_毒と私(5)

 前回の続きです。

<過去のエントリ>

読書感想_毒と私

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読書感想_毒と私(4)

<理由を明示しないのはいったいダレか>

 本を読み進めていくと、著者がいったい、ビタミンKを投与するべきだと思っているのか、投与するべきでないと思っているのか、分からなくなってきます。

(p.6より引用)

また、生後間もない赤ちゃんに、出血を防止するために人工物を投与することが、本当に悪影響をもたらすことはないのでしょうか。K2シロップは副作用がないといわれていますが、長期的に見ても安全なのかは、誰にもわかりません。

 ここでも著者は、根拠を明らかにしないままに、K2シロップの危険性を訴えていますね。まあ「誰にもわかりません」ですから、著者にもわからないんでしょうけれど。
 ビタミンKは、成人にも必要な物質です。赤ちゃんは不足しがちになるからわざわざシロップで与える、というだけで、私たちは日常的にビタミンKを摂取しています。
 「長期的に見ても」って、どういう意味なのか、ちょっと分からないです。毎日摂取しているものなのに、赤ちゃんの頃に摂取したものが大きくなったときにどんな影響を及ぼすというのでしょうか。

 どうも文章からは、K2シロップを与えること、ではなく、人工物を与えることを問題にしているようにも見えるのですけど、どちらにしろ理由は明示されていませんね。

 ちょと脱線。
 これは時々感じることなのですが、「天然のものと合成したものとは、化学式が同じでも別の物質」って思っているヒトって、けっこう多いんでしょうか。実際には、化学式が同じだったら天然か合成かの区別は無いんだけど。
 単なる組成だけでなく、タンパク質の折りたたみ構造だとか、立体異性体だとか、光学異性体(※1)だとか、立体構造まで考えないといけないモノなんかもありますけど、それだって構造式で表記し、区別できます。

 ただし、天然のモノは一般的に、精製しない限り多くの不純物を含みます。
 天然の物質と合成物との間に、もし実際に差があるとしたら、それは主成分の違いではなくて、不純物の違いだろうと思います。
 だから「人工物」の危険性を訴えるのであれば、そのへんをキチンと切り分けて、

・有害な不純物が含まれる
・天然物に含まれる不純物が主成分の有害性を抑える働きをしており、人工物にはその不純物が含まれていない

 という感じで、どこを問題視しているのか分かるような書き方をしてほしいです。
 根拠を具体的に示しながら。

 それが「理由を明確にして明示する」ってことでしょ?


<助産師はナニをしたのか。そしてナニをしなかったのか>

(p.7より引用)

<報道内容>
・助産師は、母親の同意をとらずに、ビタミンK2シロップの代わりにホメオパシーの「レメディ」を与えた。そのうえで母子手帳には「ビタミンK2投与」と記述した。

<私たちが知る事実>
 助産師は、「母親の意向」のもとに、ビタミンK2シロップを与えるのをやめたと聞いています。当然、ビタミンK2シロップの意義と、とらない場合のリスクも説明して、投与の意向を問うたうえでのことです。

 「母親の意向」があったかどうかは裁判でも原告と被告とで食い違っている点だったようですから、著者の主張を鵜呑みにはできません。
 ですが、それを措いたとしても、ほんの1ページ前で

 人工物を投与することが、本当に悪影響をもたらすことはないのでしょうか。K2シロップは副作用がないといわれていますが、長期的に見ても安全なのかは、誰にもわかりません。

 などと書いちゃっているのを見たあとでは、この文章をして「なるほど、適切なインフォームド・コンセントが成立していたんだなあ」などと無邪気にナットクすることはできません。
 以下の点についても併せて明らかにしておくべきではないでしょうか。

(1)
 K2シロップの有害性を、根拠もなく母親に対して吹き込んでいなかったかどうか。
(2)
 もともと母親に「K2シロップは有害だ」という思い込みがあったなら、それを解消するような説明をしたかどうか。
(3)
 K2レメディはいかなる意味においてもK2シロップの代替には決してならないコトを説明したかどうか。
(4)
 もともと母親に「K2レメディはシロップの代替になる」という思い込みがあったなら、それを解消するような説明をしたかどうか。
(5)
 助産師が説明した内容が、母親に確実に理解されていることを確認したかどうか。

(p.8より引用)

 助産師ももちろん、「レメディがビタミンK2シロップの代わりになる」とは言っていません。

などという説明では、まったく不足していると思います。「言わなかった」だけなの?

 さて、助産師に「K2シロップは有用である」「K2シロップを与えないことはリスクを伴う」「レメディは代替にならない」という認識があったなら、とうぜん「赤ちゃんにはK2シロップを与えるべきだ」が、基本的な姿勢になるだろうと思います。
 にも関わらず、助産師はK2シロップの不投与について主治医に報告も相談もせず、あまつさえ虚偽の記載をしてまで隠蔽しています。

 となるとこの助産師も、「生後間もない赤ちゃんに、出血を防止するために人工物を投与することが、本当に悪影響をもたらすことはないのでしょうか。K2シロップは副作用がないといわれていますが、長期的に見ても安全なのかは、誰にもわかりません。」などと考えていたのではないか、という疑念が浮かんできます。
 つまり、赤ちゃんのリスクを減らすこと(K2シロップを投与すること)への、積極的な意志や行動が欠けていたのではないか、という疑念です。

(p.9より引用)

<報道内容>
・ホメオパシーは現代医学を否定して、患者を病院から遠ざけているから有害である。

<私たちが知る事実>
 いいえ、ホメオパシーは現代医学をいちがいに否定してはいません。

 ・・・ホントに?

<注釈>
※1
 正確には、立体異性体や光学異性体、ではなく、エナンチオマー(鏡像異性体)やジアステレオマー(編左右異性体)という呼称が正確な分類となるようです。ああ、ムズかしい。

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